消費者意識は前倒しも 義務化前に保証利用を
特定住宅瑕疵担保責任履行法が5月24日、成立した。これにより、一連の耐震偽装再発防止に向けた法整備が完了した。国土交通省は今後詳細を詰めながら、2009年の秋頃をめどに施行する予定だ。また、直近では6月20日から改正建築基準法によるピアチェックや中間検査の義務化(3階建て以上の共同住宅など)が始まるなど、今後2年ほどの間に住宅建築に関する制度が大きく変わっていく。
耐震強度偽装防止に向けた一連の建築関連法改正の締めくくりとして、欠陥住宅購入被害から消費者を救済する「特定住宅瑕疵担保責任履行確保法」(住宅瑕疵担保法)が、5月24日の衆議院本会議で可決、成立した。同法は、すべての新築住宅の請負業者や販売会社に対し、品確法に定められた最低10年間の瑕疵担保に必要な資金を確保するために、保険加入か、保証金の供託を義務付けるというもの。
今後、保険法人の指定など具体的な手続きを経て、2009年秋頃をめどに保証が義務化される予定。その後は、すべての新築住宅に保険または保証金による保証がつくことになるが、裏を返せば、それまでの間は「無保証期間」だ。ところが、消費者からすると、この間、保証のついていない住宅はマイナスのイメージに映ることが考えられる。現状で同様の保証を利用しているところは追い風となるが、入っていないところは逆風となる可能性も大きい。

直近では、6月20日に改正建築基準法が施行された。改正の大枠は、構造計算適合性判定制度の導入や階数が3以上の共同住宅に対する中間検査の義務付けなど。木造住宅についても、構造計算を行ったものなどについては、構造計算適合性判定が求められるなど、手続きの変更が必要になる場合もある。
特に、改正前後の物件に関しては、国交省が指定確認検査機関に対する立ち入り検査を厳しくするなどの方針を出しており、間接的につくり手に対する検査も厳正化される。また、建築士については、罰則が大幅に強化される。前述のように立ち入り検査が強化され、違反が見つかれば、免許の取り消しなどの処分が下されることになる。事件発覚以降、実際に処分を受けた建築士の数も大幅に増えている。こうした背景から、これまで付き合いのあった建築士であっても、これまでと同じ対価では仕事を拒否されるという事態も予想される。設計者への対応も早急に考えておきたいところだ。
さらに、来年以降に施行が予定されている改正建築士法では、建築士制度自体が大きく変わる。構造設計一級建築士などの新資格を制定するほか、定期講習の義務化や確認審査の特例の見直しなどが盛り込まれている。現在、専門小委員会で内容の詳細をつめているが、建築士に求められる資質・能力がこれまでよりも高まることは間違いない。確認審査特例の見直しなどにより、木造住宅であっても構造審査が行われるケースも十分に考えられ、今から対策を考えておく必要がある。
6月20日に施行された改正建築基準法・建築士法。肝心の法令整備が遅れ、周知徹底も進んでいない。このため、6月末からの混乱が予想される。現時点(6月15日現在)での情報をもとに、改正のポイントを確認申請の手続きに絞って整理した。


「構造計算適合性判定」の導入は、改正の目玉のひとつ。対象となる建物は、確認申請時に構造設計図書の添付が求められ、都道府県知事または「指定構造計算適合性判定機関」のチェックを受けることになる。木造住宅でも「高さ13mまたは軒の高さが9mを超えるもの」は対象になるため注意が必要だ。
これ以下の木造住宅でも、仕様規定ではなく構造計算プログラムを使って確認を通していたものや、構造計算によって確認を通していた伝統構法住宅などは原則、構造計算適合性判定の対象となる[上記表1]。これら以外の木造住宅は、いままで通りだ。構造計算の方法と計算の種類・様式も告示で規定された。今後はこれにのっとって計算をする必要がある。詳細は国土交通省のホームページで確認できる。
確認検査自体も厳しくなる。主な改正点を[上記表2]にまとめた。まず、申請書式と添付書類が変わる。書式変更の大きなポイントは、設計に関わったすべての設計士に氏名の記載と押印が義務付けられること。設計士の責任が重くなる。あわせて名義貸しの罰則が強化された点にも注意したい。添付書類については、構造計算を行った場合、計算を行った建築士が書式に基づいて「構造計算安全性証明書」を発行すること、その写しを添付することが義務付けられる。計算を下請に出した場合は、下請した設計士が発行した写しを添付する。
確認検査の実務も厳正化が進む。申請時に「基準法に適合しない」と主事・確認検査機関に判断された場合、従来のように図書の差し替えや訂正による補正が認められなくなる。認められるのは誤字・脱字など軽微なもののみ。ただし、「追加検討書」による追加説明が認められる場合もある。確認審査中の計画変更も、これまでのような図書の差し替えや訂正による変更は原則不可能になる。
完了検査では、申請図書との不一致が認められた場合、済証がおりないうえ、その旨を特定行政庁に報告される。ただし小さな変更であれば、完了検査申請時に「軽微な変更説明書」を添付し主事・検査機関の判断をあおぐ。軽微な変更として認められない場合には、変更箇所が基準法に適合していることを説明する「追加検討書」を期限内に提出する。それでもダメなら計画変更確認を行う。こうした手続きを踏まないと、罰則の適用も含めた厳しい処分が下されるので注意が必要だ。つくり手の対応策をまとめておく[下記囲み]。
工務店の対応策
施主との打ち合わせを密に行い極力変更が出ない段階で確認検査を受ける
構造計算が必要な物件では特に確認検査に遅れが出る可能性があることを施主・建築主に伝える
「構造計算適合性判定員」(適判員)は、6月20日に施行された改正建築基準法で新設された新資格。高度な構造計算を要する建築物などを対象に、構造計算書を再度検査し、きちんと基準に適合しているかをチェックする役目を担う。高さ13mまたは軒の高さが9mを超える木造建築物、限界耐力計算や許容応力度計算を行った建築物なども含まれる。

国土交通省では、3月からこの適判員試験を実施。5月11日現在、受験した建築士3354人のうち最終合格者は1,561人(46.5%)。これに建築構造を専門とする大学教授などの要件を満たす者を合わせ、約1,700人の適判員が登録される。試験では
荷重の数値が一般的な数値より小さいことに気づき、その具体的な原因を述べられたか
耐力壁について恣意的に剛性低下をさせていることに気づいたか
崩壊メカニズムに至っていない段階で定めたDs値(構造特性係数)を妥当でないと判断できたか
固有周期を意図的に長く設定して地震力を小さくしていることに気づいたか
ピロティ構造の地震時のねじれ震動など力学的な挙動を理解して構造上の特徴を記述できたか
ーなどが問われた。国交省では、同試験を9月上旬にも再度行う予定。
6月20日に改正建築基準法が施行された。施行日前後での新規定の適用について国土交通省が整理し、提示した。新構造基準の適用は工事着工日、構造計算適合性判定と中間検査については申請の受理日によって、原則適用が分かれる。6月19日以前に着工した場合でも、6月20日以降に計画変更の確認申請をした場合は、新構造基準への適合や構造計算適合性判定は不要だが、中間検査は必要となる。

また、6月19日以前に確認済証の交付を受ける場合でも、20日以降に着工する場合は、新構造基準に適合しないまま着工すると違反建築物となるため、新構造基準に適合していなければならない。もし、適合していない場合は、計画変更の確認申請手続きが必要になる。 計画変更の確認申請をした場合は改正後の手続き規定が適用されるため、構造計算適合性判定と中間検査を受ける必要が生じる。
注意したいのは、6月19日以前に確認申請して6月20日以降に確認済証の交付を受ける場合。法施行後の着工になるため、特定行政庁などで新たな構造基準を前提とした審査が行われる。つまり新たな構造基準に適合する必要があるのだ。新基準に適合していれば、構造計算適合性判定と中間検査は不要だが、適合していなければ、変更申請をしなくてはいけないので、構造計算適合性判定と中間検査が必要になる。
国土交通省は、品確法に基づく住宅性能表示制度の2006年度の実施状況についての調査結果を発表した。共同住宅では前年度比で大幅に伸びた。新築住宅の設計住宅性能評価は、戸建て住宅の受付ベースで6万1,620戸、交付で6万1,875戸と、それぞれ前年度比5.3%増と6.3%増だった。共同住宅等では、受付ベースで20万247戸、交付で18万8,994戸と、それぞれ同30.9%増と37.9%増。建設住宅性能評価は、戸建て住宅の受付ベースで5万630戸、交付で4万8,389戸と、それぞれ前年度比7.0%増と3.3%増だった。共同住宅などでは、受付ベースで15万7,125戸、交付で9万6,791戸と、それぞれ同59.1%増と35.2%増。
国土交通省の発表によると、2006年度の木造3階建て戸建て等住宅の棟数は3万1,451棟で、前年度比4.1%の増加だった。このうち防火地域内の棟数は110棟、準防火地域内の棟数は1万8,706棟で、それぞれ前年度比7.8%、4.3%増加した。また、木造3階建て共同住宅については棟数473棟、戸数3,962戸とそれぞれ前年度比14.8%増、32.2%増だった。
国土交通省は、2006年度の指定確認検査機関と登録住宅性能評価機関に対する立ち入り検査結果をまとめた。国土交通大臣指定の指定確認検査機関の検査では、延べ26機関(29カ所)に構造審査や業務上の手続きの指摘を行った。また、性能評価機関の検査では、3機関に改善命令を行った。
国土交通大臣指定の指定確認検査機関(16機関)への立ち入り検査では、1機関に建築基準関係規定への不適合を指摘したほか、誤記入など書類上の指摘が7機関(8カ所)、記載事項の漏れがある確認申請の引き受けなど業務手続き上の指摘が8機関(10カ所)、経理的な基礎を満たしていないとの指摘が1機関。また、構造審査については、構造計算書と構造設計図との不整合など、9機関(11カ所)で指摘があった。
登録住宅性能評価機関については、全113機関のうち、2006年度は67機関で立ち入り検査を行った。このうち東京都防災・建築まちづくりセンター、福井県建築住宅センター、ハウスアンサーの3機関に対して「国土交通大臣が定めた評価方法基準に従わずに評価を行った」として、法律にもとづく改善命令を行った。調査はいずれも06年12月から07年3月にかけて実施したもの。
住み手との「生涯のつきあい」を念頭に置いた独自の家づくりでファン層を増やしているつくり手が山口県周南市にいる。快適住宅追求会社・中本建設(中本博社長)だ。各種保証を有効に使いながら大手ハウスメーカーにはマネできない家づくりに取り組む同社を訪ねた。
[右写真1] 開放感のある明るい吹き抜けは中本建設の得意プラン。住み手のコミュニケーションを深める空間としてだけでなく、 将来介助用リフトが設置できるよう配慮している。
「たとえ寝たきりになっても家族に囲まれ住み慣れた我が家で一生を終えたい」と誰もが願います。これを実現するのが地域で工務店を営む私の役目」。こう話す中本社長の家づくりのポリシーは、住む人が生涯暮らせる家をつくること。このため同社が提供する住宅は、温熱環境・構造の安全性・ユニバーサルデザインに徹底的に配慮している。
まず、外張り・二重通気のソーラーサーキット(SC)工法を採用することで、夏涼しく冬暖かい住まいを実現。室内には開放感のある吹き抜けをもうけ、大径構造材をあらわしとする。これは家族のふれあい空間としてだけでなく、歩行が困難になった場合に介助用リフトを吊るすための工夫だ[右写真1]。また、デイサービスの車が横付けできるよう道路・敷地・建物の位置やバランスにも配慮。リビングとデッキの段差を解消することで体が不自由になってもスムーズに移動・外出できる提案も怠らない。同社の顧客層は20代後半〜70代と幅広いが、若年層に対しても同様の提案を一貫して行っているという。
[左写真2]
[右]中本建設・中本博社長。
[左](株)三和・工藤真希子さん。
「わが社の強力な武器となっている各種保証・つなぎ融資、そしてSC工法も三和さんがすすめてくれたもの。単なる建材屋ではない提案力がすばらしく、信頼しています」(中本社長)
「中本建設さんはすべての住宅に保証を必ずつけ、しかも書類の管理も非常にしっかりやってくださいます。こうした点がお客様からの支持の源だと思います」(工藤さん)。
三和ホームページ:http://www.sanwa-co.jp
見込み客を育てるマイホーム学院
社員を置かない同社は、集客からアフターサービスに至るまですべてを中本社長夫婦が手がけ、設計・施工は協力業者に分離発注するというスタイル。特徴的なのは、集客・営業ともに「自社を売り込まない」「すぐに受注がとれなくてもいい」という姿勢を取り続けている点だ。なかでも力を入れて取り組んでいるのが、「周南マイホーム学院」と名づけた全6回の消費者向けセミナー。文化会館の1室を借りて年3回(2・6・10月)開催、土地・税金・保証の話から構造やインテリアまで内容も多岐にわたる。
「参加者は家づくりに真面目に取り組む意欲のある20〜60代。『知らないで家を建てていたら損してた』『これまで知らなかった保証の話も聞けてよかった』と評価は上々です」。生徒は毎回5〜20人。このうち約2割が受注につながっており、着実な成果をあげている。このほか、地元のケーブルテレビやFMラジオに中本社長自ら出演し、番組提供を通じて客観的な立場から「いい家とは何か」を視聴者に伝えるなど、企業色を排除した「売り込まないPR」に徹する工夫をしている。
夫婦でレイアウトから内容まで吟味して毎月500部発行するニュースレター「NakamotoNews」(左写真)。営業エリア内の銀行・ガソリンスタンドにも置かせてもらうという。ラベンダーやペパーミントのアロマオイルを染み込ませたしおりやオリジナルカレンダーをダブルクリップで留める工夫も。制作にはアロマテラピストでもある社長夫人が活躍している。
保証を標準装備生涯の安心構築に
同社の売り込まない姿勢は、「真面目な顧客とだけ一生をかけてつきあいたい」という願いから生まれている。「地域工務店が大手ハウスメーカーと大きく違うのは、その土地から絶対に逃げずお客様と一生のつきあいが続くこと。つくり手と住み手の関係は『結婚』と同じです。だから、相見積もりをとる(二股をかける)お客様を追いかけても仕方がない。そのかわり結婚すると決めたらとことん責任をもちます」。
その責任の証として同社では、すべての新築住宅に完成・瑕疵・地盤保証を標準装備。各種保証を必ず付保することで、「大手に比べ企業体力・ブランド力・認知度で劣る工務店への不安を払拭できる」という。
さらに、着工金や中間金を用意できない顧客にはつなぎ資金融資を、住宅ローン計画に悩む顧客には長期固定金利ローン「フラット35」を提案できるよう万全の準備を整えている。リフォームの場合は、既存住宅の状態を専門機器を使って検査・把握するシステムを採用することで、住み手に安心・信頼をアピールしている。
同社が提案する各種保証・つなぎ資金・住宅ローン・既存住宅検査システムは、(株)住宅あんしん保証が提供。手続きなどのサポートは、山口県の総合建材商社として知られる(株)三和が実施している[上記写真2]。
最後に中本社長にこれからの展望を聞いた。「息子が近々戻ってくるので、親子で年20棟受注するのが夢です。工務店である以上、太く短くではなく細くても長く、孫の代まで工務店を続けなきゃいけない。それこそがつくり手の使命だと思っています」。