気密性能を知るには「実測」(住宅あんしんニュースNo.255より)

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脱炭素社会の実現に向けて、一段と加速する住宅の省エネ化。消費者の関心も高まり、住宅事業者は省エネ基準適合義務化に向けて、取組みを避けられない。欠かせない基準の1つが断熱性能だ。株式会社矢野経済研究所は住宅用断熱材市場に関する調査(2021年)を実施、10月19日にその結果を明らかにした。その中で、将来展望を「今後は2025年度以降の新設住宅の省エネ基準適合義務化に向けて、ハウスビルダーや地域工務店などでも高断熱化に向けた取組が増加することから、断熱材市場は拡大する見通しである。」と発表した。

目次

1.断熱性能は気密性能とセットで考える

断熱性能を高めていくには、気密性能についても考慮する必要がある。
どんなに高性能な断熱材や外部建具等を使用して熱の移動を防いでも、隙間があれば、そこに入り込んだ空気とともに熱が移動してしまうので(高性能住宅でも、うっかり窓を開けてしまっているイメージ)、気密性能を上げなければ、十分な断熱性能は発揮できない。断熱性能向上には高い気密性能も求められる。

2.気密性能の高い住宅のメリット

断熱性能と同様に気密性能が高ければ、次のようなメリットがある。
●ランニングコストの削減
冷暖房時に内気の流出や外気の流入を防止することで断熱材が期待どおりの効果を発揮し、住民は少ないエネルギーで快適な温度で過ごせる。よって冷暖房費を抑えることができる。
●住宅の長寿命化
壁内に気流が入り込むことにより、湿気も移動してしまう。そのため、意図しない場所で結露が発生するなどして木材を徐々に腐らせ、住宅の寿命を縮める。腐った木材はシロアリを呼んでしまい、被害が一気に拡大してしまう。
結露は「室内と室外の温度差の境目」で生じる。気流と同時に湿気の移動を制御することで結露の発生を防止できる。
●健康被害の防止
結露の状態が続くとカビが発生し、住民に健康被害をもたらす。また、部屋の寒暖差による血圧の変動で「ヒートショック」を引き起こす要因になる。ヒートショックによる死亡者数は、交通事故死亡者数以上とも言われる。これらを防止し、健康的な暮らしを守る。
●計画換気の実現
隙間から流入する空気は量も一定ではなく、外気に含まれる花粉やほこりが含まれている。また、室内で発生する臭いや湿気、汚れた空気も適切に室外に排出しなければ、前述のとおり、健康被害にも繋がる。気密性能が高ければ、計画通りの換気を実現できる。

3.実際の数値を把握する

では、気密性能はどのように把握するのか?気密性能の指標はC値だ。これは実測が可能だ。実際の気密性能を測ることを「気密測定」と言う。
例えば、C値の目標を1.0以下で施工した住宅であっても、実際に気密測定をしてみるとそれを越えることがある。サッシ廻りや断熱材と断熱材の取り合い、玄関のモルタル箇所等、原因と考えられる部分を気密テープやコーキングで埋める等をして、再測定した結果、C値が1.0になるといった具合だ。机上では断熱材の断熱性能は計算すればわかるが、住宅は立体的かつ多数の人の手によって組み立てられるため、そこには数字では管理できない僅かな隙間が生じる。それが積み重なることで、いくら高性能な断熱材を使用しても隙間が多い家ができあがってしまうこともあるのだ。適切な気密の施工が求められる。
気密測定を実施することで気密性能を把握し、改善することで気密性能を高められるだけではなく、現場関係者への気密に対する意識の向上にも繋げられるというメリットがある。

4.気密性能向上のポイントと訴求

気密性能を高めるためのポイントは次のとおりだ。
気密仕様に適した工法、材料の選定
住宅には数多くの工法や材料が存在する。予算に応じた工法・材料の選定を十分に検討する。
職人による丁寧な作業・現場監督の細かな指示
気密の取りやすい材料や工法で施工しても、現場で実際に作る職人が適切な施工をしなければ気密性能の高い住宅は実現しない。気密テープや気密シートが適切に施工されているのか? 電気配線後に気密処理したのか? 基礎配管廻りの施工は適切か? 等、現場を管理する監督は気を配らなければならない。
気密測定の実施
気密性が高い工法・材料を選択し、適切な施工をしても実際のC値はわからない。まずは「気密測定」を実施して、予測と実際の差を正確に把握することが重要だ。

省エネ住宅には断熱性能と気密性能のいずれも欠かせない。
自社が手掛ける住宅の気密性能を把握し、いずれも性能が高ければ、それは施工技術の高さとしてもアピールできるだろう。



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