住宅ローン減税の行方~2024年度税制改正大綱の公表~

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住宅ローン減税の行方~2024年度税制改正大綱の公表~

 2023年12月14日、与党が2024年度税制改正大綱を発表しました。またその後、2023年12月22日に2024年度税制改正の大綱が閣議決定され、同日国土交通省より同様の内容が発表されております。もともと2022年度税制改正により2022年~2025年の入居の場合に適用される「住宅ローン減税」の制度が決定されましたが、住宅価格・物価上昇への対応や子育て・少子化対策を重視する政策等もあり、2024年入居の場合に適用される制度の内容に追加の改正がなされることとなります。
 以下、この税制改正大綱および国土交通省が公表した2024年度国土交通省税制改正概要をもとに今後予定される制度について説明します。(現時点の公表資料をもとに概要を説明するものであり、実際の制度内容については、今後確定する情報をご確認いただくようお願いいたします。)
関連税制法は2024年3月28日に国会で成立しており、以下のとおり確定しております。(2024/4/1追記)

1.新築住宅の取得に係る住宅ローン減税(2022年~2025年入居)

 住宅ローン減税は、住宅ローンの年末残高(所定の借入限度額を上限)に控除率(一律0.7%)を乗じた額について、所得税(住民税)から税額控除される仕組みです。適用対象者の所得要件(収入ではなく合計所得金額の要件)は、2,000万円以下とされています。

税額控除額=年末時点の借入残高(借入限度額を上限)×控除率0.7% →控除期間にわたり、毎年税額控除

 では、新築住宅取得の場合の「借入限度額」を確認しましょう。

借入限度額 2022年~2023年入居 2024年入居 2025年入居
長期優良住宅・低炭素住宅 5,000万円 4,500万円 4,500万円
5,000万円
(子育て等世帯(※1)
ZEH水準省エネ住宅(※2) 4,500万円 3,500万円 3,500万円
4,500万円
(子育て等世帯(※1)
省エネ基準適合住宅(※2) 4,000万円 3,000万円 3,000万円
4,000万円
(子育て等世帯(※1)
その他の住宅 3,000万円 (※3)

 2050年カーボンニュートラルの実現の観点から、認定住宅(認定長期優良住宅および認定低炭素住宅)、ZEH(ゼッチ)水準省エネ住宅および省エネ基準適合住宅について、それぞれ借入限度額が上乗せされる仕組となっています。また、2024年入居の場合、「子育て等世帯「19歳未満の子を有する世帯」(子育て世帯)または「夫婦のいずれかが40歳未満の世帯」(若者夫婦世帯))(※1)かどうかにより、借入限度額が異なります。
 なお、2024年以降に建築確認を受ける新築住宅(※3)については、省エネ基準への適合が住宅ローン減税の要件とされ、これに適合しない「その他の住宅」については住宅ローン減税が受けられません。この詳細はこちらをご覧ください。

 次に、「控除期間」。これは入居後、何年間にわたって住宅ローン減税の税額控除が受けられるかという期間です。新築住宅については13年間となります。
 最後に、対象となる住宅の床面積基準。床面積は50㎡以上が適用要件であり、ここにいう床面積は登記される面積を指します。なお、40㎡以上50㎡未満の新築の住宅で、2024年12月31日までに建築確認を受ける住宅であれば適用対象となりますが、この場合は、控除期間のうち、所得税の合計所得金額が1,000万円を超える年は住宅ローン減税による控除が適用できないという制限がつきます。

(※1)ここにいう「子育て等世帯」は、①年齢19歳未満の扶養親族を有する者(子育て世帯)、②年齢40歳未満であって配偶者を有する者、または年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する者(若者夫婦世帯)をいいます。なお、年齢については、入居年の12月31日時点における年齢とすることが想定されています。
(※2)「省エネ基準適合住宅」とは、日本住宅性能表示基準における、断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上の性能を有する住宅が該当します。また、「ZEH水準省エネ住宅」とは、断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上の性能を有する住宅が該当します。いずれも住宅ローン減税申請手続(入居年分の所得税の確定申告)において、これらを示す証明書類(「建設住宅性能評価書の写し」または「住宅省エネルギー性能証明書」のいずれか)の提出が求められます。(断熱等性能等級は、結露の発生を防止する対策に関する基準を除きます。)

(※3)2024年~2025年に入居する「その他の住宅(省エネ基準に適合する証明がない住宅)」について: 2023年12月31日までに建築確認を受ける住宅または登記簿上の建築日付が2024年6月30日以前の住宅については、借入限度額2,000万円、控除期間10年間として住宅ローン減税が適用されます。これは中古(既存)住宅の取得・入居に適用されるものと同様です。

 なお、新築住宅の取得の場合の詳細については、「住宅ローン減税を受けるには?借入限度額による違いを解説―新築住宅の取得編―」をご覧ください。

 以上の内容に関して、2024年度税制改正により改正される対象は次のとおりです(上記の記載は既に改正対象の内容を反映しています)。

①借入限度額
2024年入居の場合、2022年~2023年入居の場合に比して各区分の借入限度額がそれぞれ引下げられることととなっていましたが、「子育て等世帯(子育て世帯または若者夫婦世帯)(※1)を対象として借入限度額が維持されるよう改正されます。よって、子育て等世帯は借入限度額が引上げられます。(なお、2025年入居の条件は改正されませんが、2025年度税制改正にて2024年入居と同様の方向性で検討される旨、発表されています。)

②床面積基準
40㎡以上50㎡未満の新築の住宅の場合、「2023年12月31日まで」に建築確認を受ける住宅であれば適用対象となるものとされていましたが、「2024年12月31日まで」とされ、緩和措置が延長されました。(所得要件1,000万円以下については変更なし)。(なお、2025年の条件は、2025年度税制改正にて同様の方向性で検討される旨、発表されています。)

2.中古住宅の取得に係る住宅ローン減税(2022年~2025年入居)

 中古(既存)住宅の取得についても、住宅ローン減税による控除税額の算式は新築住宅の取得の場合と同様に次のとおりです。

税額控除額=年末時点の借入残高(借入限度額を上限)×控除率0.7% →控除期間にわたり、毎年税額控除

 中古(既存)住宅の取得の場合、算式のうち、借入限度額は2,000万円、控除期間は10年間となります(適用対象者の所得要件は新築住宅の場合と同様、2,000万円以下とされています)。よって、最大、年間14万円(=2,000万円×0.7%)、10年間で140万円までの控除を受けることができます。なお、取得した住宅が「長期優良住宅・低炭素住宅」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」のいずれかに該当する場合は、この借入限度額が3,000万円に引き上げられ、住宅ローンの年末残高が高い場合はより有利に税額控除を受けられることとなっています(10年間で最大210万円)。

 これに対し、2024年以降入居の場合、「買取再販住宅(宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われた一定の居住用家屋(※4))」であって、かつ「長期優良住宅・低炭素住宅」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」のいずれかに該当する場合は下表の通りさらに借入限度額が引上げられます。また、この場合の控除期間は、下表のいずれの場合も13年間(通常より3年間伸長)となります。リノベーション物件のうち、特に省エネ改修工事により所定の省エネ水準であることが確認された物件等の取得の場合、住宅ローン減税をよりお得に適用できるようになっています。(新築住宅の取得の場合と同様の減税額が適用されます。そのため、上記1.において2024年度税制改正により改正される対象①に記載した改正がなされ、2024年入居の場合、「子育て等世帯(子育て世帯または若者夫婦世帯)(※1)かどうかによって借入限度額が異なります。子育て等世帯は借入限度額が引上げられます。

 買取再販住宅の借入限度額:

借入限度額 2022年~2023年入居 2024年入居  2025年入居
長期優良住宅・低炭素住宅 5,000万円 4,500万円 4,500万円
5,000万円
(子育て等世帯(※1)
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 3,500万円 3,500万円
4,500万円
(子育て等世帯(※1)
省エネ基準適合住宅 4,000万円 3,000万円 3,000万円
4,000万円
(子育て等世帯(※1)

(※4)ここにいう「買取再販住宅」は、全ての買取再販物件が該当するわけではなく、「買取再販で扱われる住宅の取得に係る登録免許税の特例措置」の対象となる買取再販物件のみが該当します。具体的には、新築後10年以上経過している、リフォーム工事費が建物価格の20%又は300万円の小さい方以上である、等の要件を満たす必要があります。「買取再販住宅」の取得の場合、住宅ローン減税申請手続(入居年分の所得税の確定申告)において、「増改築等工事証明書」が必要となります。

 なお、中古住宅の取得の場合の詳細については、「住宅ローン減税を受けるには?借入限度額と控除期間による違いを解説―中古住宅の取得編―」をご覧ください。

3.その他~住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置

 住宅ローン減税のほか、直系尊属(父母・祖父母など自分より前の世代で、直通する系統の親族)から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の適用についても公表されています。
 現行の制度は適用期限が2023年12月31日までとなっていましたが、これが3年間(2024年~2026年まで)延長され、非課税限度額が500万円(耐震、省エネまたはバリアフリーの住宅は1,000万円)とされます。
 なお、この非課税限度額が1,000万円に上乗せされる住宅の要件は、現行、①耐震等級2以上または免震建築物(耐震)、➁断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上(省エネ)、③高齢者等配慮対策等級3以上(バリアフリー)のうち、いずれかに該当するものとされています。これに関して、2024年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税については、新築住宅の取得の場合における②の省エネの要件が、「断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上」に改正されます(※5)。よって、住宅ローン減税における「ZEH水準省エネ住宅」の区分であれば、省エネの要件による非課税限度額の上乗せが適用されることとなります。

(※5)2023年12月31日までに建築確認を受けた住宅または2024年6月30日までに建築された住宅は、改正前の要件である、断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上であれば、省エネの要件による非課税限度額の上乗せが適用されることとなります。


 以上、住宅ローン減税を中心に、現行の制度に対し2024年度税制改正の動向を踏まえた税制の概要について説明させていただきました。
 ZEH水準の省エネ基準を満たす新築住宅は、住宅ローン減税において省エネ基準適合住宅(2025年4月~の義務化水準)よりも借入限度が500万円上乗せ(500万円×0.7%=35,000円×13年間=455,000円 最大控除額引上げ)されるだけでなく、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置においても非課税限度額1,000万円が適用でき、さらに子育て世帯・若者夫婦世帯による取得においては「子育てエコホーム支援事業」により80万円/戸の補助金が受けられることとなりますので、建築コスト増加以上のメリットが得られる可能性があります。建築コストが増加する中で、住宅ローン減税や補助金の情報を活用しましょう。
 住宅ローン減税は住宅取得において必ず活用すべき制度であるため、ぜひ本情報を今後の取組の検討に活かしていただきたいと思います。


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