東京大学 前先生に伺う、省エネ住宅への取り組み―第2回「温暖化はウソ」「断熱は不要」「太陽光はダメ」…やらない理由探しはやめて家の力を本気で活かしませんか?―(住宅あんしんニュースNo.263より)

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 「省エネ制度改正 緊急企画!」と題して、東京大学 前先生による「省エネ住宅への取り組み」を3回にわたってお届けします。今回はその第2回目です。

目次

1.温暖化はリアルな脅威 夏の暑さが激化中

 本今年の6月は、全国で観測史上の最高気温が次々に更新されました。6月25日には群馬県伊勢崎で40.2℃まで上昇。さすがに「地球温暖化はウソ」とは言ってられないほどに、気候危機の脅威が身近に感じられる事態となりました。
 図1に、東京における夏の気温変化を、10年ごとの平均値で示しました。1910年代から2010年代までの100年間で、8月の平均気温は25.2℃から28.0℃まで2.8℃も上昇。日最高気温が30℃以上の「真夏日」は37日から58日、日最高気温35℃以上の「酷暑日」も0日だったのが8日と、昼の暑さは年々厳しくなっています。また日最低気温が25℃を下回らない「熱帯夜」も、1日だったのが35日と急増。夜も気温が下がらず寝苦しい実感を気象データが裏付けています。地球温暖化に伴う気候危機は、残念ながらフェイクではなくリアルなのです。

2.酷暑の節電要請は防げなかった「天災」か?

 酷暑が予想されるこの夏、電力供給が不足して大ピンチと、政府から冷房ガマンの節約要請が出されました。多くの国民が「お天道様の都合じゃあ仕方ない」と諦めていますが、果たして本当に天災なのでしょうか?
 夏に家の中が暑く不快で電気代も高いのは、建物の性能が不足しているからです。断熱や日射遮蔽が足りないので太陽の熱が室内に容赦なく侵入。それをエアコンの冷気で無理に抑え込むので、図2右のサーモ画像のように極端な温度ムラが生じ、電気代もかさんでしまうのです。

3.当たり前の対策を普及させられなかった怠慢による「人災」

 暑い夏でも快適に電気代の心配なく暮らす方法は、実は簡単です。家をキチンと断熱・日射遮蔽して、屋根に太陽光発電を載せればよいのです。図2左のように確実に快適になりますし、電気代の負担も大きく低減できます。
 夏も冬も快適に電気代の負担なく暮らす方法は、10年以上前に確立されていました。しかし、まともな断熱や太陽光発電は、戸建住宅のわずか1割程度にしか普及していません。
 なぜ、効果が確実な対策がこれまで普及していないのでしょうか?住宅産業および所管行政庁が「断熱は不要」「太陽光はダメ」と、やらない理由を探してはサボり抜いてきた面が否定できません。2022年にもなって未だに「夏には冷房ガマン」「冬には暖房ガマン」などと、国民を苦境に追い込んで平気な顔をしてはダメです。今の日本国民全員の苦境は、本当は容易に防ぐことのできた「人災」と考えるべきです。

4.家は生活の器 住む人を守る力がある

 筆者からすれば、社会の役に立とうとしない内向きな業界や所管行政庁が、世間から相手にされずに衰退していくのはまさに自業自得。「どうぞご自由に」としか思いません。しかし、一つだけ引っかかるのは、家は国民みんなの生活を支える、他で代えがたい「器」ということ。一部の業界の怠慢・不始末でダメにしてしまったら、国民みんなが日々の暮らしに困るのです。
 家というのは建築業界の中では地味な存在かもしれませんが、スゴイ力を持っています。この10年間で、その力はますますパワーアップ。かつての「雨露をしのげれば」どころではない、本当に住まい手の生活をガッチリ守ることができる、他に代えがたい存在になっているのです。もうそろそろ、「やらない理由」を探すのはやめましょう。住む人と社会のために、家のもつポテンシャルをフルに活かすことが切実に求められる時代になっているのですから。


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最終回 住宅こそグリーン転換の主役 暖かく涼しく電気代の心配なく暮らせる社会は住宅産業が実現できる

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