東京大学 前先生に伺う、省エネ住宅への取り組み―第1回「地球と人にいいことが安くつく」 脱炭素時代の家づくりでみんな豊かになろう―(住宅あんしんニュースNo.262より)

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東京大学 前先生に伺う、省エネ住宅への取り組み―第1回「地球と人にいいことが安くつく」 脱炭素時代の家づくりでみんな豊かになろう―(住宅あんしんニュースNo.262より)

 「省エネ制度改正 緊急企画!」と題して、東京大学 前先生による「省エネ住宅への取り組み」を3回にわたってお届けします。

1.脱炭素がささらない

「住まいの脱炭素」と聞いて、どんな印象を持つでしょうか。明るい前向きな印象を持つ人もいれば、何か「面倒くさい」「胡散臭い」と後ろ向きの印象を持つ人も少なくなさそうです。
 筆者は25年間、住宅の省エネルギーを研究していますが、率直なところ「日本では地球環境問題がささっていない」と感じています。海外では、欧米をはじめ多くの国で、地球環境問題は大きな関心事であり、特に当事者である若者は率先して行動しています。
 一方の日本は、高度成長期の成功体験のせいなのか、現在の社会・経済システムを「唯一絶対の現実解」と信じ込んでいるように見えます。現状を否定して脱炭素社会へ移行するなどもってのほか。そもそも地球温暖化なんてウソ、と言わんばかりの風潮です。

2.地球と人に悪いことが安い化石社会の限界

 しかし、現在のシステムはたかだか半世紀の歴史しかありません。今の社会において「地球と人にとって悪いことが安くつく」のは、我々以外のだれかを犠牲にしているから。もうこれ以上、大気や海・途上国や地方・弱者、そして未来から搾取することができない。日本や世界のあちこちで様々な問題が噴出している背景には、今の「化石社会の限界」が隠せなくなったからではないでしょうか。

3.日本の住宅産業はずっと「新築を安く」

 戦後の絶望的な住宅不足を解決するため、日本の住宅産業は「新築を安く」をモットーに量の追求を続けてきました。「一家に1軒」「1人に1部屋」を実現した後、本当は質の重視・ストック活用に転換すべきでしたが、一度できあがった新築偏重の産業システムは今日に至るまで回り続けています。住宅は建設と廃棄に膨大な労力と資源を消費し、日々の生活でも大量のエネルギーを消費する、地球と人に非常に大きな影響を及ぼす巨大な存在。なにより、全ての人々にとって絶対に欠かせない生活の「器」です。日本のどこでも誰もが楽しく暮らせる社会を実現するために、今の住宅のあり方がこのままで良いはずはありません。

4.電気代・ガス代そして建材価格まで急上昇

 世界の変化は我々の暮らしに直結しています。最近では化石燃料の国際価格高騰と円安の進行を受けて、わずか1年ちょっとの間に電気代・ガス代が約4割も上昇しました。もちろん直近ではウクライナ情勢が主因ですが、脱炭素に向けた化石燃料への投資減少も大きな理由です。さらに、建材の価格も急上昇しています。これまでの「大量消費」「スクラップ&ビルド」の化石時代が終わろうとしているのです。

5.地球と人にいいことが安くつく時代に

 地球と人をサステイナブルにするために、お金の流れが大きく変わりつつあります。簡単に言えば、地球と人に悪い行いにはどんどん課金して、経済的に成り立たなくしてしまうのです。日本では未導入ですが、化石燃料に課金する炭素税などがよい例です。ズルと搾取が許されなくなれば、地球と人にいいことが安くつくようになり、社会全体を良くする方向に企業は競争するようになるでしょう。現在のSDGsなどの脱炭素化に向けた取り組みは、「地球と人にいいことが安くつく」ことととらえれば、理解しやすいでしょう。
  脱炭素は、戯言でも綺麗ごとでもなんでもなく、厳しく激しい世界を巻き込んだリアルな競争です。日本の住宅産業が傍観者でいることはもはや許されません。責任あるメインプレーヤーとして、社会と住まい手に責任を果たすことが求められているのです。

地球と人にとって良いことが経済的にもオトクな時代への大転換が始まっている!


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