大規模修繕工事の施工業者を選定をするときのポイント

マンションの大規模修繕工事を行うには、まずどんな施工業者に工事を発注するかという選択を行う必要があります。どんな選び方があり、どんな施工業者が対象として考えられるのか、施工業者選びをする際に押さえておきたいポイントについて解説します。
施工業者選定のポイント
施工業者を選ぶときは、まず施工実績から見ていく必要があります。特に、マンション居住者が生活している状態で行われる修繕工事を、これまでどれくらい手がけてきたかは重要なポイントです。人が住んでいる状態での施工実績を持つ施工業者には、その種の工事を安全かつ円滑に行うためのノウハウが蓄積されています。さらにその場合、どんな階数や戸数の建物を手がけたのかという工事の規模や内容を知ることも大切です。
そのほか、現場監督をすることになる現場代理人の修繕工事実績や経歴、現場代理人と営業担当者の人柄や、コミュニケーション能力、施工業者が行う事前説明やアフターサポートを含めたサービス内容、会社規模や経営状態などをチェックすることも忘れないようにしましょう。
施工業者選定方式の種類
施工業者の選定方式には、次のようなものがあります。
見積もり合わせ方式
最も多いのが見積もり合わせ方式です。複数の施工業者に見積もりを依頼して、検討し選定する方式です。
入札方式
入札を希望する業者を公募し、数社を指名して競争入札を行う方式です。入札条件として工事中、工事後の事故による損害を補償する工事保険や、工事後の瑕疵を補償する大規模修繕工事瑕疵保険などへの加入について詳細に記載することで、リスクの対策ができます。希望に沿った施工業者を見つけるための方法としておすすめできます。
特命随意契約方式
新築時の施工業者や前回の大規模修繕工事の施工業者、管理会社の関連の施工業者など、1社のみに見積もりを依頼して検討する方式です。
施工業者の種類
施工業者にはどのような種類の会社があるのかも知っておきましょう。
ゼネコン
大規模修繕工事の需要が増えるにつれ、ゼネコン(総合建設会社)やゼネコン系列のリフォーム会社が改修工事を行うケースが見られます。名前の知られた施工業者は安心感がありますが、次項に記載の大規模修繕工事専門の施工業者と比べ、大規模修繕工事に特化した経験と実績は、施工業者によって異なります。
大規模修繕は居住しながらの工事という特殊性があるので、工事の進め方や住民との接し方に慣れているかどうかを事前に確認したいところです。
大規模修繕工事専門の施工業者
大規模修繕工事を専門に手がける施工業者も数多く存在します。もともと、大規模修繕工事に関わる塗装工事や防水工事を担当していて、実績を積んでリピート回数を増やすことで下請け工事から元請け工事もこなすようになったという施工業者が多いです。
地域に根ざした中小の会社もあれば、数十億~数百億円という売上高の大きな規模の会社もあります。専門の施工業者ならではの豊富なノウハウを持ち、状況に応じた、きめ細かい対応ができるなど、小回りが効く点が強みですが、総合的な管理能力などにやや不安が残るケースもあります。
管理会社(または関連施工業者)
マンションの管理会社に大規模修繕工事部門があって工事を請け負うケース、関連子会社などの施工業者があるケース、あるいは独立系の大規模修繕工事専門の施工業者と提携しているケースなどがあります。
マンションの管理会社にそのまま大規模修繕工事も任せることは、自分たちのマンションを一番良く知っていることによる信頼性があります。反面、建物を第三者の立場から客観的に見るという点で、外部委託や発注をする第三者と比べ、調査診断や設計及び施工がしっかり行われるのかという不安があります。
大規模修繕工事の施工業者選びは、選定方法や施工業者の種類について詳しく知り、なるべく対象を広く捉えることが大切です。また、施工業者は、工事内容(外壁工事、設備工事、耐震改修工事ほか)や建物規模・形状(高層タワーマンション、団地、一般マンションほか)によって得意不得意があります。適切で納得のいく選び方ができるよう、さまざまな方法を検討しましょう。
参考文献:
岡廣樹ほか『これだけは知っておきたいマンション大規模修繕Q&A』鹿島出版会
マンション大規模修繕研究会『世界で一番やさしいマンション大規模修繕』エクスナレッジ
※掲載内容は2017年2月時点の情報です。