設計監理方式とは? マンション大規模修繕工事の3つの発注方式とは?

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設計監理方式とは? マンション大規模修繕工事の3つの発注方式とは?

マンションの大規模修繕工事では、工事を行う施工業者以外に、管理組合が外部の業者に設計監理業務など専門業務を発注することがあります。ここでは3種類の発注方式を取り上げて、それぞれの特徴とメリット、デメリットなどについて解説します。

大規模修繕工事の3つの発注方式

改修工事の実施にあたっては、まずは、管理組合のパートナーとして、マンションの改修業務に精通した「専門家等」を選ぶ必要があります。調査診断や改修設計等の建築技術的な支援を得る必要があることから、建築士又は建築士の有資格者を有する設計事務所、建設会社、管理会社等を選定します。なお、管理組合内の合意形成の支援等を得る上では、マンション管理士等の専門家を活用することも考えられます。

大規模修繕工事に関する3つの発注方式の概要は、次の通りです。

○設計監理方式

設計監理方式とは、実際に工事を行う施工業者とは別に、建築士又は建築士を有する設計事務所・建設会社・管理会社等を選定し、①合意形成までの段階では、[調査診断・改修設計・施工業者の選定・資金計画等に係る専門的、技術的、実務的な業務]を委託し、②工事実施段階では[工事監理業務]を委託する方式です。

メリット:①「診断・改修設計」と「施工」が分離しているので、必要とされる工事を客観的に見極めた上で工事内容を定めることができ、結果的に工事費用を抑制することができる場合があります。②競争入札等の競争原理を導入して、施工業者を選定することができます。③管理組合の立場にたった工事監理が行われます。工事内容・工事費用の透明性の確保、責任所在の明確さなどの点で、建築・技術知識の少ない管理組合が工事を行う場合には、望ましい方式だと言えます。

デメリット:工事費以外に、設計監理業務費用として専門家の費用が発生します。(メリット①により、管理組合の費用負担の総額が抑制できる可能性はあります。)

○責任施工方式

責任施工方式は施工業者に【調査診断から改修設計、資金計画、実際の工事まで全て】を一任する方式です。この場合の施工業者は、建築士を有し、設計や施工、監理部門などを持つ専門工事会社、建設会社や管理会社等となります。管理組合は、信頼のおける数社や、競争入札で選定した数社の施工業者に、調査診断や修繕計画、工事費見積もりなどの提出を求め、一社を選定します。

メリット:①初期の段階から、施工業者が関わることで、施工性(工事中の仮設計画や工事実施手順等)に配慮した検討や綿密なスケジューリングが可能になります。②設計監理方式のような専門家の費用を必要としません。(注意:施工業者によっては、設計監理業務の要素がある費用を計上して、管理組合が工事費用以外に費用負担しなければならない場合がありますので、事前に、施工業者と協議し、業務内容や費用について明確にすることをおすすめします。)

デメリット:①「設計と施工」が一体化するため、工事内容と費用内訳の関係が「不明瞭」となりやすい場合があります。②技術的知識が施工業者に偏るため、管理組合が、正しい判断で必要な工事内容を定めるという点で問題となる場合があります。この方式を採用する場合は、検討結果の適切な情報開示や検討内容ごとの費用内訳の提示等を受けることが重要となります。

○コンストラクション・マネジメント方式

コンストラクション・マネジメント(CM)方式は、米国で広く活用されている建設生産、管理システムのひとつです。この方式では、発注者の補助者、代行者であるコンストラクションマネージャー(CMR)が存在します。CMRは、発注者(この場合は管理組合)とマネジメント業務契約を締結し、技術的な中立性を保ちつつ発注者に代わって、あるいは発注者をサポートする形で、大規模修繕工事に関わる各種マネジメント業務の全て、または一部を担当します。日本ではまだ広く普及しているとは言えませんが、近年、設計業界や建設コンサルタント業界を中心に、徐々にこの方式の導入が進んでいます。

CM方式のメリットは、工事の品質や工期、コストに関して最善の選択がなされているのかを、専門知識と客観的視点を持つCMRがモニタリングして分析できることにあります。設計監理方式と重なる部分もありますが、設計監理方式は設計事務所などと施工業者がそれぞれの担当領域を受け持つ形なのに対して、CM方式ではCMRが全体をマネジメントするスタイルになると言えます。

設計監理に必要な資格

大規模修繕工事を行う場合には、建築基準法により『大規模な修繕や、大規模な模様替え・増築』などの場合に、建築基準法で規定された「建築確認申請」が必要です。しかし、一般的なマンションの大規模修繕工事では、「大規模な修繕や、大規模な模様替え・増築」に該当する工事はほとんどないのが現状です。つまり、「建築確認申請」の必要がありません。

この場合、建築士又は建築士を有する設計事務所でなくても設計・工事監理業務ができるということになります。

これに対し、平成20年の建築士法改正により、「建築士事務所が設計又は工事監理業務の委託を受ける契約を、発注者(管理組合等)と締結する場合は委託契約前に、必ず建築士又は建築士事務所に所属する建築士が、建築士を証明する書面の提示と共に、委託契約内容に係わる法令事項を含む所定の内容(重要事項)について、発注者(管理組合等)に説明し、内容を書面にて交付し捺印すること」が、建築士事務所の開設者に対して義務付けられました(建築士法第24条の7)。

これにより発注者(管理組合等)は、設計監理業務等の委託契約前に、有資格者による業務の遂行であることが目に見えて判断できるようになりました。

管理組合は、設計監理業務を委託する場合には、事前に設計事務所に対し、設計監理業務が、有資格者による業務の遂行なのかを確認することをおすすめします。

参考文献:
国土交通省「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」
国土交通省「CM方式活用ガイドライン」
公益社団法人 日本建築家協会 近畿支部「設計監理の資格と建築家」

※掲載内容は2017年1月時点の情報です。

大規模修繕工事をお考えの方はこちらもご覧ください

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