一から学ぶマンションの大規模修繕工事の進め方
マンションの大規模修繕工事を実施する際は、マンション管理組合が主体となって、体制の準備、調査診断からはじまり、設計、工事を経てアフター点検までを行っていきます。その流れは、以下に述べる6つのフェーズに分類できます。なお、ここで解説するのは、工事を行う施工業者とは別に、設計事務所やコンサルタントに設計監理業務を依頼する「設計監理方式」による進め方を例としてご紹介します。
体制準備フェーズ
まずは、大規模修繕工事の体制作りからです。管理組合において大規模修繕に向けた専門委員会(修繕委員会)などを設置し、過去の経験者などのほか、希望者を募集するなどしてメンバーを選定。理事会を経て総会を開き、長期修繕計画に基づいた今回の大規模修繕工事の概要を報告、確認し、方針を決定します。
そして、設計監理業務を依頼する設計事務所やコンサルタントを探し、パートナーとして「設計監理業務委託契約」を締結します。決裁順位は総会が最上位で、その下に理事会、そして理事会とは別に専門委員会があり、外部参画者として設計事務所などのパートナーが存在する形になります。
調査フェーズ
次はマンションの不具合傾向、劣化状態を探る段階に入ります。管理組合で建物の調査診断、全住戸アンケート調査などを実施して、問題点などをリストアップしていきます。
また、パートナー(設計事務所やコンサルタントなど)もマンションの仕様、現在の状況をチェックした上で診断報告書などを作成、また結果を説明会などで報告し、修繕方法や工事の優先度に関する提案を行います。
計画の検討フェーズ
どんな修繕をどんな風に実施するか、という工事の計画を立てていきます。調査診断の結果をもとに長期修繕計画の作成、または修正を行って、工事内容、範囲、仕様を決定していきます。
また、それに合わせて資金計画についても確認し、修繕積立金から割り当てる額を見積もります。もしも修繕積立金が不足している場合は、区分所有者からの一時金徴収や金融機関からの融資についても検討します。
工事業者の選定フェーズ
計画が固まったら、パートナーが大規模修繕工事の具体的な仕様を設計します。続いて、工事業者=施工業者を公募し、入札などを経て選定します。パートナーは施工業者が提出した見積書を精査し、プレゼンやヒアリングを通じて専門家の立場からその内容を検証し、選定について管理組合にアドバイスを行います。施工業者が内定後、総会決議によって工事金額、工事監理者などを改めて正式に決定します。
工事の実施フェーズ
管理組合が施工業者との間で「工事請負契約」[参考:平成28年4月刊行:「マンション修繕工事請負契約約款」※刊行元:民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款委員会]を締結し、パートナーとの間で「監理業務委託契約」を締結し、その後、着工へと進みます。工事実施にあたっては工事説明会を経て、試験施工、定例会議、各種検査を行い、施工開始となります。
パートナーは工事監理業務として、設計した仕様通りに工事が進捗、実施されるかどうかをチェックし、工事中に問題や不具合が発生すれば、どのように対応するかを管理組合へ報告・変更提案を行い、管理組合が協議の上、決定します。
工事の見直しフェーズ
終了した工事について、結果の確認とアフター点検を行います。工事の実施内容について、長期修繕計画と照らし合わせて分析と総括を行い、場合によっては長期修繕計画の修正も含めて整合を図ります。パートナーは工事監理記録を整理して提出、さらに今後の維持管理、定期的な検査に関する提案と助言を行います。
大規模修繕工事は、基本的に以上のような流れで行います。大規模修繕工事は、準備段階を含めれば数年かかることもあるので、理事会や専門委員会のメンバーとして加わる際はその心づもりで取り組みましょう。
参考文献:
建物診断設計事業協同組合「大規模修繕の流れ」
マンション大規模修繕研究会『世界で一番やさしいマンション大規模修繕』エクスナレッジ
※掲載内容は2017年1月時点の情報です。