建物状況調査のあっせん「無」には理由が必要に―2024年4月1日より媒介契約書が改訂

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建物状況調査のあっせん「無」には理由が必要に―2024年4月1日より媒介契約書が改訂

 「宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する省令」及び「標準媒介契約約款の一部を改正する件」が2024年1月 24 日に公布され、建物状況調査に関する内容が2024年4月1日から施行されます。
 また、「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」についても整備が行われ、建物状況調査の見直し関係についても同じく2024年4月1日から施行されることになりました。

1.2018年に施行された改正宅建業法

 はじめに2018年4月1日に施行された改正宅建業法について振り返ります。この改正では「既存建物の取引における情報提供の充実」として、建物状況調査の活用が促されたことがポイントです。
 具体的には①媒介契約時-媒介契約書面に、建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載 ➁重要事項説明時-建物状況調査の結果の概要、建物の建築・維持保全の状況に関する書類の保存状況を重要事項として説明 ③売買契約締結時-建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項を記載することが必要になりました。
 ➀のあっせんとは、建物状況調査を実施している業者に関する単なる情報提供ではなく、売主、買主と業者の間で建物状況調査の実施に向けた具体的なやりとりが行われるように手配することです。(例:建物状況調査を実施する者が作成した建物状況調査費用の見積もりを媒介依頼者に伝達すること等)
 宅建業者は媒介契約書に「建物状況調査を実施する者のあっせんの有無」について記載することが必要で、売主等からの希望があれば制度概要等について紹介することが求められます。その上で希望があり、あっせんが可能な場合には、媒介契約書にあっせんの実施を明記するとともに、具体的な手配を行うこととなります。
 中古住宅の調査、検査についてはその目的や実施主体の違いで内容、項目が異なりますが、重要事項としての説明の対象となる建物状況調査は、既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士が、建物の基礎、外壁など建物の構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化・不具合の状況を把握するための調査で、国土交通省が定める「既存住宅状況調査方法基準」に基づき、目視・計測を中心とした非破壊で行われるものをいいます。

2.2024年4月1日に施行される改正内容

 建物状況調査のさらなる普及促進に向け、2024年4月1日に施行される改正内容は次のとおりです。

2-1.宅地建物取引業法施行規則関係の改正内容―建物状況調査の見直し関係の改正内容

 重要事項説明の対象となる建物状況調査の結果は調査実施後1年を経過していないものとしていました。
 しかし、既存住宅状況調査方法基準において、共同住宅の住戸内・住戸外における調査を異なる調査者がそれぞれ実施することが可能とされたことを踏まえ、共同住宅(鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅等に限られます。)に係る重要事項説明の対象となる建物状況調査の結果について、中古住宅売買向けかし保険への加入に必要な現場検査の基準と同様に、調査の実施から2年を経過していないものに延長しています。

2-2.標準媒介契約約款関係の改正内容

 建物状況調査の見直しを踏まえ、標準媒介契約約款における建物状況調査の記載について、建物状況調査を実施する者のあっせんを「無」とする場合における理由の記載欄を設けるとともに、トラブル回避の観点から、建物状況調査の限界(瑕疵の有無を判定するものではないこと等)について明記することになりました。

「標準専任媒介契約約款」より 媒介契約の目的物件が既存の住宅である場合で、あっせん「無」とする場合、その理由を記入することに。理由の例としては、 甲が、建物状況調査を実施する者のあっせんを希望しないため、目的物件の所有者から、建物状況調査の実施の同意が得られないため、既に建物状況調査が実施されているため等。また、瑕疵の有無を判定するものではないこと等を明記。

2-3.宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方関係の改正内容

 建物状況調査の見直し関係の改正に伴い、媒介契約の目的物件が既存の住宅である場合において、あっせん「無」とするときの理由の記入例について記載することになりました。
 また、建物の維持保全等の状況に関する書類について、現行求められている保存状況の説明のほか、必要に応じ、その概要等についても消費者に情報提供することが考えられる旨を明確化しています。
 さらに、建物状況調査の活用と併せて、売主等から告知書の提出を求めることにより、買主等への情報提供の充実を図ることの重要性を明確化しました。
 告知書の記載事項としては、①土地関係:境界確定の状況、土壌汚染調査等の状況、土壌汚染等の存否又は可能性の有無、過去の所有者と利用状況、周辺の土地の過去及び現在の利用状況 ②建物関係:新築時の設計図書等、増改築及び修繕の履歴、石綿の使用の有無の調査の存否、耐震診断の有無、住宅性能評価等の状況、建物の傾き、腐食等の存否又は可能性の有無、過去の所有者と利用状況 ③その他:消費生活用製品安全法(昭和48年法律第31号)第2条第4項に規定する特定保守製品の有無、従前の所有者から引き継いだ資料、新築・増改築等に関わった建設業者、不動産取得時に関わった不動産流通業者等 などが考えられるとしています。

3.7割以上は一律あっせん「無」が実情

 2022年度に実施された国土交通省による宅建業者向けアンケートによれば、「媒介契約時に一律に建物状況調査を実施する者のあっせんを『無』と示している」のは7割以上にのぼりました。【図1】
  そして、「一律にあっせん『無』と示している理由」として、3割以上が「あっせんに係る業務の手間が負担になるため」をあげています。【図2】

【図1】一律にあっせん「無」と示している割合 ✓ 「一律にあっせん無としている理由」の設問に回答した業者割合74.1%

【図2】一律にあっせん無としている理由 一律にあっせん無と示している場合、その理由について3割以上が「あっせんに係る業務の手間負担」「売主・買主の ニーズがないと判断している」「調査を実施する適切な者がいない・見つからない」と回答 

出典:「改正宅地建物取引業法の施行状況及び今後の見直しの方向性について 国土交通省 不動産・建設経済局不動産業課 令和5年3月」より宅建業者向けアンケート(令和4年度実施 国土交通省 不動産・建設経済局不動産業課)に基づいて作成

 他方、既に宅建業者の中には、建物状況調査ではわからない瑕疵の発覚に備えて、中古住宅売買向けかし保険も取り入れて自社の強みとしてアピールする動きも広がっています。かし保険への加入は物件の購入を検討している人が抱える品質がわらかないことから生じる不安や心配を和らげるだけではなく、売主はもちろんのこと、その取引に携わる宅建業者にとってもリスクヘッジになります。(詳しくは「2022年10月1日から2号保険にも住宅紛争処理制度の対象が拡大します!」)
 今回の改定によって、あっせん「無」とする場合には理由が求められます。それが「手間が負担だから」では到底、理解を得ることは難しいでしょう。
 少なくとも建物状況調査をあっせんできる十分な体制は整えておく必要がありそうです。

4.プロにも役立つ中古住宅専門のWEBメディア

 建物状況調査は取引を後押しする仕組みですが、営業現場での説明の難しさに悩んで対応が進んでいない宅建業者の方もいるかもしれません。
 住宅あんしん保証ではグループ会社の住宅あんしん検査と協力して中古住宅専門のWEBメディア「中古住宅のミカタ」を運営しています。中古住宅の売る・買う・検査・保証のあんしんガイドとして、賢く売買するために役立つ情報が満載です。
 消費者向けのメディアではありますが、中古住宅に多角的に関わる専門家、有識者の方々がわかりやすく解説する記事が充実しており、いずれもサイトのオリジナルの記事です。
 宅建業者の方も実務に照らしながら理解を深めていただけるとともに、営業活動のヒントも見つかるかもしれません。

中古住宅専門のWEBメディア「中古住宅のミカタ」はこちら≫

5.最後に

 中古住宅流通の市場が活性化するとともに、安心して住宅の売買を行える環境が整うことは消費者にとっては住宅取得における選択肢の幅が広がることを意味します。それは業界にとっても歓迎すべきことですが、それだけ競争が激化することでもあると言えるでしょう。
 消費者が自ら情報を手に入れ、簡単にクチコミや評価を発信できる時代ですから、建物状況調査の対応1つでも、これから先は大きな差になりかねません。
 これを機会に、建物状況調査のあっせんやかし保険への加入等でお困りの場合には次の「お問い合わせフォーム」からお気軽にお問い合わせください。
 また、建物状況調査についてさらに詳しくお知りになりたい方は、次の「建物状況調査」のページをご覧ください。同ページでは、売主様向け・買主様向けのパンフレット等も公開しておりますので、是非、ご活用ください。

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