延長瑕疵保険を “きっかけ”にリフォーム工事の獲得を目指す!(住宅あんしんニュースNo.229より)

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延長瑕疵保険を “きっかけ”にリフォーム工事の獲得を目指す!(住宅あんしんニュースNo.229より)

築10年は節目の年

2009年10月1日に「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」が全面施行され、10年が過ぎた。いよいよ、本格的に新築住宅向け瑕疵保険(以下「新築瑕疵保険」)の保険期間満了を迎える住宅が出現している。
築10年は住宅の状況をしっかりと確認すべき節目の年でもある。このタイミングにしっかりと状況を確認しておかないと良好な状態を維持するのは難しい。
また、一般的に、築10年から15年の間に塗装工事を行うことが多く、屋根や外壁の塗装工事等を検討し始める住宅所有者が増えてくる。 この時期にどのような対策を講じるかが重要で、検査を実施し、現況を確認したうえで然るべきメンテナンスを行うか、何もせずに放置しておくかで将来の維持費が大きく変わってくるといっても過言ではない。しかし、残念なことに、この事実を理解している住宅所有者は多くないだろう。
そこで、築10年を迎える住宅所有者に対し、新築住宅を供給した住宅事業者は瑕疵保険の満期案内とともにメンテナンスの重要性をしっかりと説明し、これから先も長く快適に暮らすためのアドバイスを行うという役割を担うことで、ビジネスチャンスに繋げたい。これが10年目の点検につながり、将来発生するであろうメンテナンス工事や生活の質を向上させるリフォーム工事の獲得機会の創出に役立つからだ。

関係途切れた顧客とも接点を再構築

住宅あんしん保証(東京都中央区)では、こうしたメンテナンスにかかわるリフォーム工事の受注を目指す住宅事業者のサポートとして、2018年4月よりあんしん住宅延長瑕疵保険(以下「延長瑕疵保険」)の引受けを行っている。
「今現在、定期的に訪問し良好な関係を構築できているOB顧客はもちろんのこと、既に関係が途切れ、訪問に抵抗を感じるOB顧客であっても、この〝10年目〟を顧客との関係を深めていくリスタートの好機と捉え、新築瑕疵保険の満期案内・延長保証をきっかけにリフォーム工事の提案に繋げていってほしい」と同社は言う。

延長瑕疵保険の仕組みをおさらい

本号では、延長瑕疵保険を活用した具体的な提案方法を紹介していくが、まずはその前に延長瑕疵保険の仕組みについて整理しておく。
ポイントは3つ。
1つ目のポイントは「検査」だ[図1]。
延長瑕疵保険を付帯するには、対象となる住宅に対し住宅事業者(建築士の有資格者)による「瑕疵保証検査」と、住宅あんしん保証による現況検査に合格することが必要だ。なお、瑕疵保証検査を行う建築士が既存住宅状況調査技術者の資格を有している場合、住宅あんしん保証の現況検査を省略できる「検査特例」がある。いずれにおいても検査に合格することで、延長瑕疵保険の申込みが可能だ(この場合、選択できる保険期間は最長5年、築15年まで)。
一方、対象となる住宅の検査実施後、住宅あんしん保証が指定する工事(以下「修繕工事」)を行い、同社による工事完了後の検査(施工状況確認検査)を受け、合格することで、保険期間が最長10年の延長瑕疵保険に加入できる。 延長瑕疵保険検査の流れ

2つ目のポイントは「保険期間とプラン」だ[図2]。10年目に実施した検査の合格をもって保険期間が最長5年の延長瑕疵保険を付帯できる「初回延長プラン」、その期間中に指定の修繕工事を実施し、検査に合格することで最長10年の延長瑕疵保険を付帯できる「再延長プラン」、新築後10年を経過しており15年以内に検査と修繕工事を行うことで検査合格日から10年間の延長瑕疵保険を付帯できる「10年補償プラン」等の幅広いプランがある。

延長瑕疵保険の保険期間とプラン

最後のポイントは、10年の延長瑕疵保険を付帯するためには必ず修繕工事が伴うことだ[図3]。 工事内容は、①屋根仕上げ材および陸屋根・バルコニーのトップコート(保護層)の塗装等、②外壁仕上げ材の塗装等、③各部シーリング工事、④雨掛かり木部の塗装等である。 瓦屋根やタイル等、そもそも塗装を必要としない部材もあるため、工事を免除する場合もある。利用を検討する場合には、事前に住宅あんしん保証へ確認するとよい。ただし、どのような部材であっても検査で不具合が見つかれば、補修は必要だ。

メンテナンス工事内容

リフォーム工事獲得 への3ステップ

いよいよここからは、リフォーム工事獲得のための具体的な提案だ。 まずは、新築瑕疵保険10年満期を迎えるOB顧客を対象に、次のようなステップを踏む。

【ステップ1】 住宅所有者に対し、10年間の保証期間終了を案内する。この案内とともに、10年目以降のメンテナンスの重要性やそれを行わない場合のリスク等を伝える。メンテナンス工事を考えていなかった住宅所有者は不安に感じる可能性がある。そこで、10年目という節目にこそ「検査」が必要であることを伝える。10年を経過する住宅の現状を把握することで将来のリスクが考えられるうえ、検査で問題がなければ保証を延長(最長5年間)することができるため、不安を安心に変えることができる。

【ステップ2】 保証の継続で住宅所有者との関係も継続し、他社の介入を防ぐことができる。 5年間(最長)の保証期間中に、メンテナンス工事の内容や将来にわたる資金計画を住宅所有者とともに立てておく。その際、工事を自社で行うことで更に10年間の保証の延長が可能であることを案内すれば、住宅所有者も安心して任せてくれるだろう。

【ステップ3】 更に10年間の保証期間中に、将来発生する設備機器の入替えや次のメンテナンス工事、そして、生活の質を向上させるリフォーム工事の獲得に向けた提案を適宜行っていく

目指すゴールは生涯顧客化

このように、新築瑕疵保険の「満期案内」を住宅所有者との接触をはかる起点とし、リフォーム提案を行うということだ。アフターサービスが充実すれば顧客満足度があがり、新規の紹介客も期待できる。また、延長瑕疵保険をアフターサービスに組み入れ、保証を延長することで、住宅所有者との接点を維持する。OB顧客が他社へ流れるのを防止し、将来にわたり発生するリフォーム工事獲得を目指す。これにより、生涯顧客化の実現が期待できる。

OB顧客以外への提案にも活用

延長瑕疵保険をきっかけにしたリフォーム工事獲得には、もう1つの提案方法があると同社は言う。
それは、新築時には接点がなく、既に引渡しから10年が経過したものの、15年は経過していない住宅に対する提案だ。
延長瑕疵保険の対象住宅は「引渡しされた日から起算して10年を経過し、かつ15年を経過しないもの」とある。つまり、築15年以内の住宅だ。
築13年~15年目の住宅所有者の多くが外装の塗装工事を行うのは前述のとおり。今まさに塗装工事の検討時期を迎えた住宅所有者に対して「長期保証付きメンテナンス工事」として提案するのだ。
そこで、活用できるのが延長瑕疵保険の「10年補償プラン」。
新築当時に瑕疵保証や新築瑕疵保険に加入していなかった住宅でも、条件を満たせば延長瑕疵保険に申込みできる。

長期保証付きメンテナンス工事を提案

具体的には、次のような営業トークを用いた提案が考えられるだろう。

【営業トーク例】
▼弊社では、新たな取組みとして『長期保証付きメンテナンス工事』のサービスを提供いたします。
▼家の劣化は日々進行しています。一般的には築10年から15年の間に屋根や外壁の塗装工事を行うことが望ましいと言われており、メンテナンスせずにそのまま放置すると雨漏り等の原因を作ることになってしまいます。
▼私たちは建築のプロとして数多くの実績を有しており、施工には自信を持っておりますが、お客様に更に安心していただくために、必ず施工前に建築士による建物の現況調査を行います。工事後には保険法人による現場検査を受け、施工に不備がないことを確認した後、「構造躯体と防水部分の10年保証」を行っております。適切な施工とあわせて検査と保証の「安心」を提供しています。また、私たちは国土交通省が認可している住宅あんしん保証の「延長瑕疵保険」へ加入するので確実に保証を履行でき、安心です。
▼ついては、是非とも、弊社の「長期保証付きメンテナンス工事」を活用しませんか?

大手に負けない「4つの安心」

これらのPRポイントをまとめたのが[図4]にあげた「4つの安心」だ。
有資格者による施工前の検査、プロによる施工、第三者による工事後の検査、基本構造部分に対する10年保証。この「4つの安心」を、外部塗装工事、それに付随するリフォーム工事とパッケージングして、自社のチラシやホームページに掲載し、他社とのメンテナンス工事との差異化を図る重要な武器としてアピールできる。 大手住宅事業者では、20年、30年といった長期保証が当たり前になりつつある。住宅あんしん保証では、中小の住宅事業者であっても大手に負けない長期保証の仕組みを導入できるよう、延長瑕疵保険を「長期保証パッケージ」として活用することを呼び掛けている[図5]。

4つの安心
長期保証パッケージ

住宅事業者自身を守るツールにも

最後に、延長瑕疵保険が持つ、もう1つの側面を紹介する。
住宅事業者は、民事上、瑕疵担保責任だけではなく、不法行為責任を問われるリスクがある。「瑕疵担保責任期間である10年を過ぎれば、賠償リスクはない」というのは誤りだ。
過去の最高裁判決でも、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」については不法行為責任が発生するとされた。
この「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは、「居住者等の生命、身体又は財産を危険にさらすような瑕疵」をいい、現実的な危険をもたらしている場合に限らず、「当該瑕疵の性質に鑑み、これを放置するといずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合」も含まれる。つまり、築10年を過ぎても、基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合には損害賠償請求の対象となりうるのだ。
延長瑕疵保険には、リフォーム工事獲得のきっかけのための「攻め」のツールであると同時に、住宅事業者が長期に渡ってさらされている損害賠償リスクに対する「守り」としての機能も兼ね備えていることを覚えておきたい。

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