住宅ローン減税の行方~2026年度税制改正~

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住宅ローン減税の行方~2026年度税制改正~

 2025年12月19日、与党が2026年度税制改正大綱を発表しました。現行の住宅ローン減税の適用期限は20251231日をもって終了(※1)となるところ、適用期限が5年間延長され、その内容が変更されることとなりました。
 住宅価格の高騰やライフスタイルの変化などを受けて、中古住宅取得への支援が拡充され、特に省エネ性能等の高い中古住宅については金額・期間ともに減税幅が拡充されるほか、子育て等世帯にはさらなる控除の上乗せがなされることとなりました。また、住宅ローン減税の適用要件となる床面積基準も50㎡以上から40㎡以上に拡充され、適用対象が広がることとなりました。
 以下、この税制改正大綱をもとに今後予定される制度について説明します。(現時点の公表資料をもとに概要を説明するものであり、実際の制度内容については、今後確定する情報をご確認いただくようお願いいたします。)

(※1)2025年中の入居の場合における住宅取得については、現行の制度が適用されます。その詳細は「住宅ローン減税の行方~2025年度税制改正大綱の公表~」にてご紹介していますので、ご覧ください。

1.新築住宅の取得に係る住宅ローン減税(2026年~2030年入居)

 住宅ローン減税は、住宅ローンの年末残高(所定の借入限度額を上限)に控除率(一律0.7%)を乗じた額について、所得税(住民税)から税額控除される仕組みです。適用対象者の所得要件(収入ではなく合計所得金額の要件)は、2,000万円以下とされています。

税額控除額=年末時点の借入残高(借入限度額を上限)×控除率0.7% →控除期間にわたり、毎年税額控除

 まず、「控除期間」。これは入居後、何年間にわたって住宅ローン減税の税額控除が受けられるかという期間であり、「13年間」とされます。
 では、新築住宅取得の場合の「借入限度額」を確認しましょう。

借入限度額 2026年~2027年入居 2028年~2030年入居
長期優良住宅・低炭素住宅 4,500万円 4,500万円
5,000万円
(子育て等世帯(※2)
5,000万円
(子育て等世帯(※2)
ZEH水準省エネ住宅(※3) 3,500万円 3,500万円
4,500万円
(子育て等世帯(※2)
4,500万円
(子育て等世帯(※2)
省エネ基準適合住宅(※3) 2,000万円
3,000万円
(子育て等世帯(※2)

 2050年カーボンニュートラルの実現の観点等から、現行の制度と同様、認定住宅(認定長期優良住宅および認定低炭素住宅)、ZEH(ゼッチ)水準省エネ住宅および省エネ基準適合住宅について、それぞれ借入限度額が上乗せされる仕組となっています。また、「子育て等世帯「19歳未満の子を有する世帯」(子育て世帯)または「夫婦のいずれかが40歳未満の世帯」(若者夫婦世帯))(※2)かどうかにより、借入限度額が異なります。
 なお、2030年度以降新築される住宅はZEH水準の省エネ性能が確保されることを目指すとされ、今後、省エネ基準の段階的な引き上げが予定されています。そのため、2028年以降の入居の場合、現行の省エネ基準にあたる「省エネ基準適合住宅」については原則として住宅ローン減税が受けられないこととなります。具体的には、2028年以降に建築確認を受ける住宅(登記簿上の建築日付が2028年6月30日以前のものを除く。)、または建築確認を受けない住宅で登記簿上の建築日付が2028年7月1日以降のものについては、ZEH水準省エネ基準を満たさなければ住宅ローン減税が受けられないこととされました。(※4)

 さらに、対象となる住宅の床面積基準。床面積は原則として50㎡以上が適用要件であり、ここにいう床面積は登記される面積を指します。なお、40㎡以上50㎡未満の新築の住宅も適用対象となりますが、この場合は、控除期間のうち、所得税の合計所得金額が1,000万円を超える年は住宅ローン減税による控除が適用できないという制限がつきます。

 以上のほか、安全・安心な住まいの実現の観点から、土砂災害などの災害レッドゾーンでの新築(建替えを除く。)は住宅ローン減税が適用されないこととされました。

(※2)ここにいう「子育て等世帯」は、①年齢19歳未満の扶養親族を有する者(子育て世帯)、②年齢40歳未満であって配偶者を有する者、または年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する者(若者夫婦世帯)をいいます。なお、①または②に該当するか否かについては、入居年の12月31日時点(扶養親族または配偶者が、年の中途において亡くなられた場合にはその死亡の時)の現況により判定することとされています。
(※3)「省エネ基準適合住宅」とは、現行の省エネ基準に適合する住宅をいい、日本住宅性能表示基準における、断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上の性能を有する住宅が該当します。また、「ZEH水準省エネ住宅」とは、断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上の性能を有する住宅が該当します。なお、2025年までの入居の場合、住宅ローン減税申請手続(入居年分の所得税の確定申告)において、これらを示す証明書類(「建設住宅性能評価書の写し」または「住宅省エネルギー性能証明書」のいずれか)の提出が求められましたが、2026年以降の入居の場合に同様の証明書類となるのか等は今後公表される情報を確認する必要があります。(ここにいう断熱等性能等級は、結露の発生を防止する対策に関する基準を除きます。)

(※4)2028年以降に入居する「省エネ基準適合住宅」について: 2027年12月31日までに建築確認を受ける省エネ基準適合住宅(登記簿上の建築日付が2028年6月30日以前のものを含む。)、または建築確認を受けない省エネ基準適合住宅で登記簿上の建築日付が2028年6月30日以前のものについては、借入限度額2,000万円、控除期間10年間として住宅ローン減税が適用されます。これは中古(既存)住宅の取得・入居に適用されるものと同様です。

2.中古住宅の取得に係る住宅ローン減税(2026年~2030年入居)

 中古(既存)住宅の取得についても、住宅ローン減税による控除税額の算式は新築住宅の取得の場合と同様に次のとおりです。(適用対象者の所得要件は新築住宅の場合と同様、2,000万円以下とされています。)

税額控除額=年末時点の借入残高(借入限度額を上限)×控除率0.7% →控除期間にわたり、毎年税額控除

 中古(既存)住宅の取得の場合、算式のうち、借入限度額は2,000万円、控除期間は10年間となります。よって、最大、年間14万円(=2,000万円×0.7%)、10年間で140万円までの控除を受けることができます。
 
 なお、取得した住宅が「長期優良住宅・低炭素住宅」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」のいずれかに該当する場合は、この借入限度額が下表のとおりとなり、さらに控除期間は13年間に伸長されます。控除期間が3年間伸長される上、住宅ローンの年末残高が高い場合はより有利に税額控除を受けられることとなっており、「子育て等世帯」(※2)には借入限度額が上乗せされます。具体的に、累計の最大税額控除額は、下表の「最大控除額(13年間)」の列に示すとおりとなり、これらに該当しない住宅の取得の場合(10年間累計で140万円)に比して、手厚い支援とされました。

  借入限度額
(2026年~2030年入居)
最大控除額(13年間)
長期優良住宅・低炭素住宅 3,500万円 318.5万円
4,500万円
(子育て等世帯(※2)
409.5万円
(子育て等世帯(※2)
ZEH水準省エネ住宅(※3) 3,500万円 318.5万円
4,500万円
(子育て等世帯(※2)
409.5万円
(子育て等世帯(※2)
省エネ基準適合住宅(※3) 2,000万円 182万円
3,000万円
(子育て等世帯(※2)
273万円
(子育て等世帯(※2)

 これに対し、「買取再販住宅(宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われた一定の居住用家屋(※5))」であって、かつ「長期優良住宅・低炭素住宅」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」のいずれかに該当する場合は、この借入限度額が下表のとおりとなり、さらに控除期間は13年間となるため、新築住宅の取得の場合と同等の減税額が適用されます(累計の最大税額控除額は、下表の「最大控除額(13年間)」の列に示すとおりとなります)。リノベーション物件のうち、特に省エネ改修工事により所定の省エネ水準であることが確認された物件等の取得の場合、住宅ローン減税をよりお得に適用できるようになっています。

 買取再販住宅の借入限度額:

  借入限度額
(2026年~2030年入居)
最大控除額(13年間)
長期優良住宅・低炭素住宅 4,500万円 409.5万円
5,000万円
(子育て等世帯(※2)
455万円
(子育て等世帯(※2)
ZEH水準省エネ住宅(※3) 3,500万円 318.5万円
4,500万円
(子育て等世帯(※2)
409.5万円
(子育て等世帯(※2)
省エネ基準適合住宅(※3) 2,000万円 182万円
3,000万円
(子育て等世帯(※2)
273万円
(子育て等世帯(※2)

(※5)ここにいう「買取再販住宅」は、全ての買取再販物件が該当するわけではなく、「買取再販で扱われる住宅の取得に係る登録免許税の特例措置」の対象となる買取再販物件のみが該当します。具体的には、新築後10年以上経過している、リフォーム工事費が建物価格の20%又は300万円の小さい方以上である、等の要件を満たす必要があります。「買取再販住宅」の取得の場合、住宅ローン減税申請手続(入居年分の所得税の確定申告)において、「増改築等工事証明書」が必要となります。


 さらに、中古(既存)住宅の取得の場合において、住宅ローン減税の対象となる住宅の床面積基準。床面積は原則として50㎡以上が適用要件であり、ここにいう床面積は登記される面積を指します。なお、40㎡以上50㎡未満の新築の住宅も適用対象となりますが、この場合は、控除期間のうち、所得税の合計所得金額が1,000万円を超える年は住宅ローン減税による控除が適用できないという制限がつきます。(新築住宅の取得の場合と同様となり、対象が拡充されました。)

3.その他

①固定資産税
 新築住宅に係る固定資産税の税額の減額措置などの適用において、住宅ローン減税と同様に、適用要件となる住宅の床面積要件の下限が、50㎡以上から40㎡以上に拡充されます。なお、土砂災害などの災害レッドゾーンでの新築(建替えを除く。)は減額措置の適用対象から除外されます。
②不動産取得税
 住宅及びその土地に係る不動産取得税の課税標準等の特例措置などの適用においても、適用要件となる住宅の床面積要件の下限が、50㎡以上から40㎡以上に拡充されます。なお、土砂災害などの災害レッドゾーンでの新築(建替えを除く。)は減額措置の適用対象から除外されます。
③住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置
 直系尊属(父母・祖父母など自分より前の世代で、直通する系統の親族)から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の適用については2024年度税制改正において措置され現行の制度が2026年まで適用されることとなっており、非課税限度額が500万円(耐震、省エネまたはバリアフリーの住宅は1,000万円)とされています。なお、この非課税限度額が1,000万円に上乗せされる住宅の要件は、①耐震等級2以上または免震建築物(耐震)、➁断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上(省エネ)(※6)、③高齢者等配慮対策等級3以上(バリアフリー)のうち、いずれかに該当するものとされています(2024年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について)。よって、住宅ローン減税における「ZEH水準省エネ住宅」の区分であれば、②の省エネの要件による非課税限度額の上乗せが適用されることとなります。

(※6)2023年12月31日までに建築確認を受けた住宅または2024年6月30日までに建築された住宅は、改正前の省エネの要件である、「断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上」であれば、省エネの要件による非課税限度額の上乗せが適用されることとなります。


 以上、2026年以降の入居の場合に適用される住宅ローン減税の制度概要について説明させていただきました。
 2030年度以降新築される住宅はZEH水準の省エネ性能が確保されることを目指すとされ、今後、省エネ基準の段階的な引き上げが予定されている中、省エネ性能の高い住宅等であればより減税額が拡充される仕組みとなっています。ZEH水準の省エネ基準を満たす新築住宅は、住宅ローン減税でも、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置でも支援が充実しており、さらに子育て世帯・若者夫婦世帯による取得においては「みらいエコ住宅2026事業」により補助金が受けられる(GX志向型住宅に該当するものであれば子育て等世帯に限りません。)など、さまざまな支援策を活用できますので、建築コスト増加以上のメリットが得られる可能性があります。建築コストが増加する中で、住宅ローン減税や補助金の情報を活用しましょう。
 住宅ローン減税は住宅取得において必ず活用すべき制度であるため、ぜひ本情報を今後の検討に活かしていただきたいと思います。


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