セミナー開催レポート「非住宅木造建築物セミナー」(2023年12月14日(木)開催)
2023年12月、非住宅木造建築物に取り組む地域工務店に様々な支援・アドバイスを提供されている市川宣広氏(株式会社リヴ)を講師に迎え、「非住宅木造建築物セミナー」を開催しました。当日は具体的な事例を複数交えてお話いただき、WEBで100名以上の方にご視聴いただきました。
ここでは、その内容を一部抜粋し、開催レポートとしてご紹介します。
1.セミナー情報
非住宅木造建築物セミナーの開催概要は次のとおりです。
1-1.開催概要
非住宅木造建築物セミナー
- ~対象者~
- 非住宅木造建築物への取組みをお考えの方
- 地域工務店としての特性を活かせる新たな事業をお探しの方
- 非住宅木造建築物の受注に不安を感じている方
開催日時:2023年12月14日(木)16時~17時
[内容]
第1部:地域工務店の特性が活かせる、非住宅木造建築
–住宅工務店ならではの非住宅木造–
第2部:非住宅木造建築物向け検査・保証制度について
一般社団法人住宅あんしん検査
1-2.講師紹介
市川 宣広(いちかわ のぶひろ)氏
一級建築士
株式会社リヴ 大型木造推進部 部長
全国の地域工務店に非住宅木造建築の様々な支援を行う「地産木造ビル推進本舗」の運営を行っています。
2.セミナー内容
市川宣広氏による「地域工務店の特性が活かせる、非住宅木造建築–住宅工務店ならではの非住宅木造–」をテーマにお話いただきました。
2-1.第1部 地域工務店の特性が活かせる、非住宅木造建築–住宅工務店ならではの非住宅木造–
非住宅木造建築物への具体的な取組みについて、ご紹介します。
2-1-1.会社紹介
株式会社リヴは京都府西部を中心に、不動産事業、注文住宅、分譲住宅、リノベーション等を行っています。
先導的モデル事業に採択されたり、地域でいち早く長期優良住宅を標準化する等しており、価格で競合するハウスメーカーに対してもいかにして差別化できるか、高性能・高耐久住宅に加えて、地産材の活用や地域の気候風土、住まい方を考えた住宅を手掛けている「地域工務店」です。
2-1-2.木造ビルに取り組んだきっかけ
転換点となったのは2015年に本社ビル「SU・BA・CO」の建築です。
その当時、材料不足により当初予定していた鉄骨では工事が遅れてしまう可能性がありました。
同じ頃、関東で大手住宅メーカーで5階建て(1階RC造・2~5階木造)の事例が生まれたという記事の掲載があったことから、自社ビルの計画も鉄骨造から木造に変更することにしました。
この試みは「地元大工が木造ビルを建てる」として話題になります。その反響は予想以上で、さまざまなメディアで取り上げられることになりました。
国産材の活用や環境問題への配慮、さらには東京オリンピックの開催にむけ、木材をふんだんに取り入れた新国立競技場の計画等で木造の利用拡大への注目が高まった時期とも重なり、本格的に事業としての取組みが始まりました。
2-1-3.施工事例と受注のストーリー
事業用建物を木造化することのメリットには次のようなものがあります。
- コストの削減になる
- 発注者である事業主のブランディングに活かせる
- 快適性等の性能に優れている
地産材の活用は地産地消として、地域のニュースになります。地元のテレビ番組に取り上げられたりすることで、事業主自身の地域シェア獲得、ブランド化につながります。
一方、住宅と比べて事業用建物は、事業主がリピーターとして、短期に2棟目、3棟目の実現につながる可能性があるのが特徴で、工務店側にとってもリピーターになってもらうことができて、Win-Winの関係が構築できます。
また、木造そのものが持つメリットとして、「疲れにくさ」の実感や底冷え感の少なさ、エアコンの効きといった温冷感の良さなど利用者・使用者からの声も印象的です。
受注のストーリーにおいて「地産材を活用して、地元の大工による施工で地域のランドマーク、街並創生を実現できる」「競合との差別化やブランディングとして、地域材の活用による建築をトピックとして訴求できる」というのは地域工務店ならではです。
2-1-4.事業戦略のヒントとまとめ
公共事業をはじめとした地域の案件においても木造が増えており、木造を避けては通れない、取り組まざる負えない状況になりつつあります。
都市化が進んでいる地域では、中層ビルが建替え時期を迎えています。その建替えを木造でという動きも広がっています。
非住宅木造の実績を作ることで、木造部分の支援についてJVで協働してもらえないかといった声がかかって取り組む事例もあり、それまでの地域工務店にはあまりなかった建築案件の取組みルートの開拓にもつながっています。
地域工務店ならではの非住宅木造とは
- 地元の材料(地産材の活用)
- 地元の企業・職人(地域の活性化)
- 地元の建物・街並み風景(地域の強靭性・気候風土)
- 地元の付加価値・ニュース(地元企業の元気な取組み)
+「地球」環境にも貢献するという4つの「地」+αを活かすことができる、つまり、地域のトピックや地域の材料を取り入れていくことで差別化し、受注につなげていくことができると考えます。
※市川氏による住宅あんしん保証のホームページ内「お役立ち情報」の人気連載コラム「『非住宅木造建築』地域工務店が建てる非住宅木造建築とは?(全3回)」も是非、あわせてご覧ください。
2-2.第2部 非住宅木造建築物向け検査・保証制度について
住宅あんしん保証のグループ法人である一般社団法人住宅あんしん検査では、「非住宅木造建築向けあんしん建物検査・保証制度(以下「制度」)」を2022年11月より販売しています。第2部ではその内容について、紹介しました。
2-2-1.非住宅木造建築物市場の確認
建築物の年間着工棟数(「国土交通省の建築着工統計調査報告 令和4年」に基づき、住宅あんしん検査調べ)は、住宅を含めて約47万棟あります。そのうち、非住宅の建築物は約9%(約42,300棟)ほどです。非住宅の建築物のうち、木造は35%にすぎません。
また、低層建築物の構造割合においても、住宅は9割が木造ですが、非住宅は4割にも満たず、残りが木造化市場として広がっていると考えられます。
その他「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の改正による国の木造化推進の一方、住宅とは異なり発注者の保護制度等が十分ではない非住宅の実情を踏まえ、事業者、発注者が安心して非住宅木造の契約ができるしくみづくりをしたいと考え、住宅あんしん検査ではこの制度の販売を開始しました。
2-2-2.制度概要
この制度は、対象建築物に対する住宅あんしん検査による検査と損害保険契約がセットになったものです。
対象となるのは、木造を含む混構造で住宅の用途を含まない建築物です。(例:保育園・幼稚園、店舗、診療所、介護施設・老人ホーム、事務所、倉庫、宿泊施設、工場、公民館・集会場など)
住宅あんしん検査の「あんしん建物検査・保証制度」の詳細はこちら
2-2-3.申込状況
販売開始から右肩上がりで申込みが増えており、北海道から沖縄まで、全国のさまざまな用途の建築物で加入があります。
具体的には事務所、店舗が約6割を占めています。販売当初は、延床面積は300㎡未満が6~7割を占めていましたが、認知度が広がるにつれて延床面積の大きい福祉施設や宿泊施設などの問い合わせも増えてきています。
2-2-4.現場検査による「あんしん」
住宅あんしん保証の新築住宅向けかし保険の引受にあたって実施する現場検査での指摘事項の発生割合と比較し、この制度の加入に必要な現場検査における割合はその3~4倍程度にものぼり、さまざまな指摘があがります。
現場監督の方にとって、現場検査で指摘があがることは望ましくないものですが、それらは適切に是正されれば制度の加入が可能となります。
第三者による現場検査は、発注者や施工会社の経営層にとって、品質の確保に繋がる、現場の意識向上が期待できるなどの理由から、実施して良かったという声をいただいています。
2-2-5.制度加入のメリット
今後、地場の工務店の方々も非住宅木造に積極的に取り組まれるはずです。
この制度への加入には主に次のようなメリットがあり、非住宅木造建築物の分野に安心して参入・推進できるようになることが期待されます。
- 発注者への10年間の確実な保証の提供
- 第三者による現場検査の実施で、品質確保・現場の意識向上
- 競合他社との差異化につながる
3.まとめ
第1部では、実際に非住宅木造建築物の実務に携わっている市川氏からさまざまな事例を通して、地域の工務店ならではの取組みについてお話いただきました。
第2部では、非住宅木造建築物に取り組む事業者にとって役立つ制度についてご紹介しました。
3-1.参加者の声
本セミナー開催後に実施したアンケートでは、全体の内容に対し「満足」あるいは「大変満足」が約9割にのぼりました。セミナーの中でも複数の事例が紹介されましたが、参加者からはさらに「もっと掘り下げて事例等を知りたい」といった声が寄せられ、関心の高さがうかがえました。
3-2.最後に
今後も引き続き、セミナーの開催等を通じて、事業者の皆様に役立つ情報をご案内してまいります。
一般社団法人 住宅あんしん検査では、非住宅木造建築物向けかし保証制度「あんしん建物検査・保証制度」の資料請求や見積もりのご相談等を次のフォームより承っております。お気軽にお問い合わせください。