住宅事業者が提案に取り入れるべき「住まいを長持ちさせる方法」とは?―第1回 住まいを長持ちさせる3つのポイント

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住宅事業者が提案に取り入れるべき「住まいを長持ちさせる方法」とは?―第1回  住まいを長持ちさせる3つのポイント

 住宅あんしん保証は、新築住宅に関する雨水の浸入による被害(以下「雨漏り事故」)を未然に防ぐため、かねてより届出・登録事業者の方に向けて雨漏り事故の傾向や雨漏り事故を防止するための情報提供に取り組んでいます(そのひとつが、連載「目指せ、雨漏り事故ゼロへの道‼」)。
 近年は、既存住宅、具体的には新築から10年を超えるような戸建住宅に関して、住宅の所有者または買主が安心して、長く住み続けていただくための情報提供にも取り組んでいます。
 この連載では、その取組みの一環としてだけではなく、住宅事業者が自社のリフォーム工事の獲得につなげていくために住宅の所有者である顧客の提案に取り入れるべき『住まいを長持ちさせる方法』を、住宅の点検やメンテナンス工事、保証サービス等を通じてご紹介します。

1.重要なのは「定期点検」「メンテナンス」「記録の保管」の継続

 今回は「住まいを長持ちさせる3つのポイント」について、その概要を確認しましょう。

1-1.変化してきた住宅の在り方

 高度経済成長期以降、日本の建物に対する考え方は「スクラップ&ビルド型」が主流で、建物を次から次へとつくり出し、より多くの資金を循環させようという考え方が加速化していきました。その影響もあり、日本における建物の平均寿命は欧米と比べて非常に短く、国土交通省の資料によると建物がつくられてから消失するまでの平均期間は、米国が55年、英国になると75年もあるのに対して、日本はわずかに30年しかありません。
 1990年代の後半になると、「環境」に対する社会の関心が急速に高まっていき、大量のゴミを出す建物の廃棄にも配慮が求められるようになりました。
 現在は、建物をできるだけ長く使っていこうという「ストック型」へと移行しつつあり、廃棄物の縮小、資源・エネルギー消費の削減にも寄与するため、環境負荷の軽減という点で社会に貢献することが期待されています。

1-2.安心して長く住み続けるための3つのポイント

 住宅の在り方も「ストック型」へと変化しています。新築住宅に限らず既存住宅においても、安心して長く住み続けるためには、次の3 つのポイントを継続的に実施することが重要です。
 住宅事業者側からも、定期的な点検や適切なメンテナンスが重要であることを積極的に案内し、雨漏りをはじめとした住宅のトラブルを未然に防ぐように働きかけましょう。

1-2-1.定期的な点検

 私たちが健康診断などを受診するように、住宅についても定期的な点検が必要です。
 新築住宅の「定期点検」はハウスメーカー等によっては、引渡後3ヶ月、6ヶ月、1年、2年、5年、10年、そして、それ以降は有償で、5年または10年毎というのが一般的です。
 ハウスメーカー等はそれまでの実績や知見によって、点検のタイミングごとにどのような不具合が発生しているかおおよその見当がつくことから、予め点検の項目やポイントをマニュアル化し、それに基づき点検を行っています。

1-2-2.適切なメンテナンス

 点検の結果、不具合があった場合には、必ず早めにメンテナンス工事を実施しましょう。
 不具合をそのまま放置するとますます状態が悪化し、復旧するのに多大な費用がかかってしまいます。
 例えば、外壁の亀裂を放置して長年にわたって雨水が壁内に浸入し続けた住宅では、下地材と構造躯体の腐朽がシロアリやカビの発生を招き、それらが原因で構造耐力性能の低下や人体に被害が及び大がかりな改修工事に発展してしまいました。
 定期的に点検を行い、亀裂箇所を早期に発見・補修していれば、被害の拡大を防げたかもしれません。

1-2-3.記録の保管

 新築時の図面や仕様書等と共に点検結果やメンテナンス工事の記録などを保管しておくことは、その後の点検およびメンテナンスを実施する際の重要な情報となります。また、記録が保管されていることで既存住宅の付加価値を高められる可能性があります。

住宅履歴情報の活用に関する情報

(住宅あんしん保証の住宅履歴情報サービス「あんしんいえかるて」はこちら

1-3.メンテナンスの事例

 定期的な点検を実施した結果、緊急性の高い不具合が見つからなくても、その後の経年劣化による雨漏り等の重大な不具合を未然に防ぐためには、定期的なメンテナンスが必要です。防水部分に関するメンテナンスについては【図】のメンテナンスの事例を参考にしてください。

【図】防水部分に関するメンテナンスの事例

【注意事項】
・各事例は、木造戸建住宅で採用されることが多い「化粧スレート屋根、サイディング外壁、バルコニーFRP防水」を想定しています。
・各事例は、一般的な目安として記載しています。実際に必要となるメンテナンスは、築年数だけでなく、各建材の標準耐用年数、使用環境、メンテナンス時の工事の仕様など建物の個別の状況により異なります。

1-3-1.屋根(化粧スレート屋根)のメンテナンス

屋根(化粧スレート屋根)のメンテナンス

 化粧スレート屋根は新築から10〜15年に塗装を行います。材としての寿命は一般的に25年程度とされ、経年劣化で割れやすくなった化粧スレート屋根はカバー工法や葺き替え工事を行います。
 また、棟板金等の浮きや釘抜けも、新築から10年ほどで起こりやすいので、屋根の塗装工事の際には、棟板金等の状況もチェックしましよう。

【寿命を延ばす最適なメンテナンス方法例】
・築10年で1回目の屋根塗装
・築20年で2回目の屋根塗装
・築25〜30年でカバー工法か葺き替え工事

1-3-2.外壁(サイディング外壁)のメンテナンス

外壁(サイディング外壁)のメンテナンス

 同じ外壁材でも日がよく当たる面の劣化スピードが速いなど、立地や家の形状、気候、外壁塗料の種類などによって状態は違ってくるため、最適なメンテナンス周期はケースバイケースです。窯業系サイディングの場合、新築から10年程度ごとを目途に塗装、25~30年程度で状況に応じて張り替えが必要になる場合もあります。
 また、サッシまわりや外壁材目地のシーリング材も、紫外線や建物の揺れなどで徐々に劣化しますので、定期的な点検はもちろん、地震や台風の後のほか、年に1度は住宅の所有者自ら確認して早めのメンテナンスをすることが大切です。
 新築から7、8年以降に状況に応じて、部分打ち替え、全面打ち替えを行います。

1-3-3.バルコニー(バルコニーFRP防水)のメンテナンス

バルコニー(バルコニーFRP防水)のメンテナンス

 バルコニーFRP防水の寿命は、日々の使い方や周辺環境などにも左右されますが、一般的には10年程度になります。また、トップコート(表面保護)は5~10年程度ごとの塗り替えが目安となります。
 外壁や屋根のメンテナンスも10年程度が目安となるため、これらの工事に併せてメンテナンスを実施することも有効です。
 FRP防水のメンテナンス時期は劣化状況から判断するほうが確実です。メンテナンスが必要な劣化の例としては次の4つがあります。

  • トップコートのふくれ
  • トップコートの剥がれ
  • ひび割れ
  • 水たまり

 防水層までトップコートがふくれていたり剥がれていたりする場合や、ひび割れがある場合は基本的に防水層の再施工が必要です。

2.点検やメンテナンスの重要性の案内方法

 住宅あんしん保証では、住宅の所有者などに向けた情報提供の1つとして「メンテナンスの重要性のご案内」(リーフレット)を用意しています。
 安心して、長く住み続けてもらうためには、住まいのプロである住宅事業者側からもこうしたツールを活用して、定期的な点検や適切なメンテナンスが重要であることを積極的に案内し、雨漏りをはじめとした住宅のトラブルを未然に防ぐように働きかけましょう。

2-2-1.「メンテナンスの重要性のご案内」の主な内容

 「メンテナンスの重要性のご案内」では主に次のような内容をわかりやすく説明しています。

  • 雨漏りが発生する原因は?
  • 雨漏りは発見が遅れると木部が腐るなど 工事費用は高額に…!
  • 経年劣化による事故事例
  • 経年劣化状況をチェック!
  • 「定期点検」と「メンテナンス」で被害と費用を最小限に

メンテナンスの重要性のご案内(抜粋)

ダウンロードはこちら

3.点検やメンテナンスの重要性を後押しするサービス

 住宅の所有者に点検やメンテナンスの重要性について理解を深めてもらう一方で、住宅事業者にとっては、それらを通じて、先々の生活の質を上げるためのリフォーム工事の獲得につなげたいところです。
  最近では、新築から30年あるいは60年といった長期保証を提供する動きが、大手のハウスメーカーやビルダーを中心に広がっています。その多くは自社保証で、顧客との接点を強固なものとしています。
 規模がそれほど大きくない住宅事業者がそのしくみをゼロから作り上げるには時間も人も必要になります。
 しかし、点検やメンテナンス工事、さらには保証があらかじめまとまっているしくみがあれば、同様の長期保証の提供を実現できます。
 そこで、活用したいのが延長保証サービス「延長かし保険」です。
 ここでは住宅あんしん保証の延長かし保険「あんしん住宅延長瑕疵保険」を簡単にご紹介します。(詳しくはこちら。また、今後の連載でも改めて取り上げる予定です。)

3-1.延長かし保険を取り入れるメリット

 住宅あんしん保証では延長かし保険を取り扱っています。延長かし保険は、新築住宅の引渡しから続いた瑕疵担保責任期間(「住宅の品質確保の促進等に関する法律」による10年間)の後も継続して保証を提供する場合や、保証が切れてしまったOB顧客に改めて保証を提供する場合に、その保証の履行をバックアップするための保険です。

3-1-1.生涯顧客化を実現

 前述のとおり、 安心して、長く住み続けるための点検やメンテナンスといったアフターサービスの充実を通じて、長期にわたる顧客との接点を強固なものとする動きが広がっています。
 新築住宅の着工の減少が確実視されているこれからは、新築の契約時点から点検やメンテナンスの重要性を知ってもらい、それらを通じた生涯顧客化への取組みは欠かせません。
 本来、メンテナンス工事を実施するべき時期というものはありますが、それが顧客の懐事情とタイミングが合うとは限りません。したがって、メンテナンス工事やリフォーム工事の実施を決断したときに最初に思い出してもらえる存在になっておかなければなりません。 住宅の所有者である顧客との接点を維持できれば、時間の経過によって生じる住まい手のライフスタイルの変化や日常的な困りごとなどをヒアリングする機会を持つことができます。延長かし保険を導入することにより、切れ目のない保証を軸として顧客をつなぎとめ、生涯にわたっての関係構築を助けます。
 住宅事業者は「お客様の住まいにとっての頼れる“見守り役”」としてニーズに見合う提案もしやすくなり、顧客が競合他社に流出してしまうことを防ぎます。

3-1-2.長期保証付きメンテナンス工事で顧客獲得

 すでに疎遠になってしまったOB顧客に対して、新築住宅のかし保険の保険期間である10年という1つの節目に、その満期案内をきっかけにして、延長かし保険を取り入れることで同様に生涯顧客化への機会を再創出します。
 また、それまで接点が全くないもののメンテナンス工事を検討している新規の顧客に対しても、自社が強みにしているその他のサービスとかけあわせながら、点検・工事・保証をパッケージングした「10年間の長期保証付きメンテナンス工事」といったオリジナルサービスとして提案することができます。

3-1-3.民法上の不法行為責任に対するリスク回避

 新築住宅の引渡しから10年を過ぎても、基本的な安全性を損ねる欠陥と過失がある場合には民法上の不法行為責任として損害賠償請求の対象となる可能性があります。
 延長かし保険の利用は、自社のリスクマネジメントにもつながります。

4.まとめ

 住宅の所有者が長く安心して住み続けるためには、定期的な点検や適切なメンテナンスなどを継続することが大切です。それが、経年劣化による雨漏りをはじめとした住まいのトラブル防止につながります。
 これからの住宅事業者は、新築の契約時からこれらの重要性を積極的に案内しながら「住まいの見守り役」として寄り添うことで、将来必ず発生するメンテナンス工事や暮らしを向上させるようなリフォーム工事の提案につなげていきましょう。
 次回以降は長持ちさせるポイントをさらに掘り下げ、劣化事象や雨漏り等の事例をまじえながら、具体的な点検部位や点検内容についてご紹介します。

連載コラム 住宅事業者が提案に取り入れるべき「住まいを長持ちさせる方法」とは?
第1回 第2回 第3回 第4回

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