木材利用を通じた社会貢献の実現を目指して 未来への人材投資を惜しまずに育てた若手大工集団が木造施設事業推進の原動力に

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木材利用を通じた社会貢献の実現を目指して 未来への人材投資を惜しまずに育てた若手大工集団が木造施設事業推進の原動力に

徹底したデザインへのこだわりで、本物志向の顧客の心を掴んできたセルコホーム加盟店の「フォレストヴィラホーム」。そして、今や、依頼が次々と舞い込む若手大工集団「ジールクラフト(zeal=情熱・熱意、craft=職人の意)」を率いる代表の中安章氏に、10年以上も前から取り組まれている木造施設建築事業や若手大工集団誕生の秘話をうかがいました。

1.セルコホームの特徴

―まず、貴社の住宅についてお聞かせください。カナダ輸入住宅「セルコホーム」に加盟されています。どのような特徴がありますか?

セルコホームは、カナダ輸入住宅No.1のハウスメーカーが展開する住宅です。

セルコホームに来られるお客様は、日本人が高級な輸入車に惹かれるように、やはり「本物が好きな方」ですから、そうした方々に対して、どのようなご提案ができるかというのがすごく重要です。つまり、他との差別化です。他にはない、市場性がそこにあります。

隙間的なポジション取りになるとは思いますが、やはり「本物が好きな方」が少なからずおられますから、そこをターゲットにしています。それがセルコホームの最大の特徴だと考えています。

また、カナダは国土が広く、森林王国ですから、材料として天然木をふんだんに取り入れます。非常に環境の厳しいところで、夏は気温が40度位、冬はマイナス60度位にもなります。住宅先進国として環境問題にも積極的で、厳しい環境に適応した、今の時代に合った家作り、世界水準の省エネルギーの住宅が普通に作られています。デザインだけではなく、そうした優れた性能を求めて来られるお客様も多くいらっしゃいます。それもセルコホームの特徴ではないかと考えています。

輸入住宅との出会い

かつて、私は全国的なハウスメーカーに在籍していたことがあり、当時もさまざまな住宅会社や住宅がある中で、このセルコホームには魅力を感じていました。出会いは30年ほど前のサラリーマン時代に遡ります。その頃は「洋風」、つまりは世界に対する日本人の憧れがありました。

ある時、ハウスメーカーの店長として総合住宅展示場で立っていたときのことです。他の会社さんの輸入住宅、当時は「洋風住宅」と呼ばれていましたが、モデルハウスがありました。それを見たお客様が「すごく素敵な家があったよ」と教えてくれたのです。

前述の高級な輸入車と同様に、デザイン性や性能に優れた本物の輸入住宅は憧れの対象でした。当時、価格もそれほど高いものではありませんでした。お客様からは「あなたもそういったものをちょっと勉強しなさい」と言われました。私もその住宅を実際に目にして、機会があったら輸入住宅を手掛けてみたいと思いました。

その後、転職し、セルコホームに出会いました。デザイン性があって、性能も素晴らしく、それも日本だけに留まらない世界水準です。さらに、当時は価格もすごくお得感がありました。世界に対する憧れから始まって、「デザイン」「性能」、そして「適正な価格」と三拍子が揃っていました。非常に魅力を感じました。たまたま縁があって、サラリーマンを辞めることになり、自分で起業したのが18年前です。

2.木造施設建築事業参入の経緯

―今から10年ほど前には既に福祉施設をはじめとした、貴社でいうところの「木造施設建築事業」に参入されています。どのような経緯だったのでしょうか?

デザイン性に優れたセルコホームを求めるお客様の中には、経営者や医師をされている方が多くおられます。その割合は4割ほどにものぼります。

12年ほど前の話になりますが、自宅をセルコホームで建てた病院の理事を務めていた方から、高齢者向け施設の新築相談を受けました。

当時、とあるテレビ番組で、有名大学を卒業した方が大工さんとして働き、大型の木造建築を手掛ける企業が取り上げられていました。そのテレビ番組を見ていて「今からの時代、木造でいろいろ大きなものをやっていけないかな」と考えていた時期でしたので、引き受けることにしました。

同じ頃、九州の宮崎県で大型木造施設の構造見学会があり、自分もバスで会場に向かいました。そこでは「木造でこんな大きな建物が建てられるのか」と、非常に驚きました。

私達の会社はRCに特化したゼネコンというわけではありませんし、何より木造で始まった会社です。急にRCを始めるとなると、当然、設計も現場監督さんも勝手が違いますから、社員の技術適応力にも不安があります。でも、「木造なら何とかやれるんじゃないか」という思いもありました。

3.若手大工集団誕生の秘話

―早くから若手の育成にも注力されています。木造施設建築事業の成長にどのようにつながったのでしょうか?

その構造見学会では他にも気づいたことがありました。

大型の木造施設建築ですから、10名以上の大工さんが現場で右に左にと動き回っていたのです。衝撃を受けました。

帰りのバスの中で、自社を思い浮かべると「うちは外注で請け負う一人親方の大工さんがせいぜい5、6名かな」と。それも当時は60代、70代の大工さんばかりでした。彼らのお子さんたちは、既に他の仕事をされていて、後継者がいないとも聞いていました。

つまり、「木造施設をやる」ということは、同時に「大工さんの数がいる」とわかったのです。育成の必要性に気づいたのはまさにそのときでした。

それまではあまり先を考えてなかったのですが、初めて10年後、15年後の未来を考えるようになりました。そして、自分の中でいろいろと計画を練り立てていったときに、辿り着いた結論は「やはり若手の大工さん、職人さんを育てるしかない」と。黙って見ているだけでは、彼らは減る一方です。「もう、これは自分でやるしかない」。帰ったらすぐに取り掛かることにしました。

採用までの道のり

もともと自分の父親も建設業でしたから、私も現場上がりです。人を育てるのは簡単ではありませんし、職人さんともなればなおのことです。それは、自分が一番よくわかっていました。どうやって若い人を育てるか…?と悩みました。また、一人前に育つまでには非常にお金もかかります。創業から4、5年目で、大きな利益も出ていましたので、その分を「未来に向けて人材投資をしよう」と早速、幹部会議で話をしました。

ところが、みんないい顔しないんです。ほぼ全員から反対されました。そこで、私は「10年後、大工さんどうすると?10年後15年後の未来を、みんなどうすると?」と問いかけました。誰も答えを持ち合わせてはいませんでした。

十数年前に私が危惧していたことが、今まさに現実のものとなり、大工さんの数はこの20年程で半減しています。しかし、当時の社員にはピンときていなかったのです。

大きな反対にあったものの、最後は自分で決めるしかありません。経営者ですから、私が全責任を負います。最後には「俺はやるんだ!」と言って、押し切りました。

それから、さまざまな求人活動を行った結果、1期生として7名が入社してくれました。

ところが、3年で彼らは全員辞めてしまいました。それでも、1期生が残っているあいだに入社してくれた2期生が、次々去っていく先輩の様子に奮起し「僕らは先輩たちとは違う。だから社長、任せてください!」とまで言ってくれたのです。その言葉が本当に嬉しくて、今でも感謝しています。この2期生からが真の若手育成のスタートになりました。

育成の工夫

育成においては、当時の取締役とともにオリジナルの技術評価表を作成しました。入社1年目から5年目まで、それぞれ習得しなければならない項目を具体的に示しました。

それを点数制にして、半年毎にどこまでできるようになったかを確認します。セルコホームさんから提供されたツーバイフォーの施工マニュアルも活用しました。

職人の世界では、いまだに「俺の背中を見て覚えろ」の風潮がありますが、それでは今の若い人達には通じません。何をどう覚えたらいいのかを明確に「見える化」してあげる必要があるのです。昔流では無理なのです。

点数でわかると良い競争も生まれて「社長、ここの欄がチェックできないんですけど…この仕事をさせてもらえる現場に行かせてください!」と社員自らが声をあげるようになりました。

人を育てるためには、あらゆることをしなければいけないと思いました。試行錯誤の連続でしたが、いずれそうして育てた大工さんたちが、きっと私達の力になってくれるであろうと、そして、それは私が目指す大型の木造施設建築事業には必ず必要なことであると信じていました。

失敗もたくさんあって、人が辞めざるを得ないこともありました。不信感を覚えこともありましたが、それでも今も頑張ってくれている人がいて。そういう感じで今、少しずつ若い人が育ってきています。

1学年ずつしか年が離れていないことで、みんな18歳の時の自分のことを覚えていますから、すごくいいんです。ありがたいことに、現場では先輩たちが「自分たちも通ってきた道だから」と後輩を見守ってくれて。私が現場を見に行かなくても、全く問題なく回っています。いい循環が生まれたと思います。

全員、フォレストヴィラホームの工事部に在籍していました。しかし、この人手不足です。もう引く手あまたで、フォレストヴィラホーム以外のいろいろな会社さんからお声がかかるようになったこともあって、4年前にグループ会社「株式会社ジールクラフト」として独立しました。

今は、リペアを担当する補修職人さんも1人採用しています。来春には、また新卒者2名の採用が決まっています。今や、福岡でNo.1の若手大工集団の会社です。福岡の地場においては、多分一番有名になってきていると思います。

双方への取組みが実を結ぶ

福岡の新築戸建住宅は非常に厳しい状況です。ご存知の通り、この10年で物価は上昇し、建築コストも例外ではありません。木造のコストも上がっているのですが、他も非常に上がっています。

木造施設を建てることは設備投資です。事業として投資する以上、できるだけコストは抑えなければいけません。これは建築主さんも、そして、それを融資する金融機関も然りです。

RCや鉄骨と比較すると、木造は減価償却期間が短く、コストを15~20%抑えられますから有利です。そこに対して、私達の出番が増えてきました。さらに、前述のとおり、施工部隊が揃っているという点も加わって、独自の強みになっています。

例えば、1年間RCで検討したものの予算が全く合わないというお客様がいました。人づてに「何とかなりませんか?」と相談があり、私達が「この値段でできますよ」と提示したところ、あっという間に受注が決まりました。そういうことが増えてきています。

住宅とは違って、規模の大きい木造施設は1人、2人の大工さんでは建ちません。人手不足は足かせになります。受注できても、建てる人がいないと大変なことになります。未来に向けた大工さんの育成なくして、施工はできません。施工部隊の彼らがいるからこそ安心して受注でき、お客様に「ご契約通りに着工いたします」というお約束ができるのです。最も大事なことです。

私達が木造施設建築ができることが少しずつ知られるようになってきたことで、金融機関や不動産会社等からも紹介をいただけるようになってきました。木造施設建築への取組みと若手の大工さん、職人さんの育成を「一緒に」進めてきたことが、ここにきて少しずつ脚光を浴びるようになってきて、おかげさまで今の良い方向に繋がっていると考えています。

木造施設建築の現場では「ジールクラフト」の若手大工達が活躍する。

4.保証制度導入のメリット

―木造施設建築事業においては、非住宅木造建築物向け「あんしん建物検査・保証制度」を継続してご利用いただいています。どのようなメリットを感じていただいていますか?

私達は規模の大きな会社ではありませんから、やはり建て主さんからすると、直接は口にされませんが現実問題として、少し不安要素もあると思うんですよね。こうした制度があることは大きな安心につながります。

セルコホームに加盟しているので、住宅の場合には20年保証システムがあります。新築戸建を建てる会社さんは、加盟されている団体のそういった制度の利用が当たり前になっています。個々の工務店さんの場合でも、瑕疵保険のしくみがあります。でも、住宅以外の場合は対象外です。お客様を逃さないようにしたい私達にとって、この制度があると非常に受注活動にも役立ちます。

また、自社や行政による検査はありますが、制度の導入によって全3回の現場検査が実施されることから、私達も第三者の厳しい目に何度もさらされることになります。その方が、お客様へのアピールにもなりますし、それによって社員も襟を正すではないですけど、キュッと引き締まるという効果もあります。

建物に何か問題があれば、当然、信用を落としてしまいますから、そうならないように細心の注意を払いますが、万が一のことがあった場合、やはり自社が保証するのは負担が大きいですから、制度があるのはありがたく、メリットだと考えています。

「あんしん建物検査・保証制度」を導入した倉庫の外観(福岡県)

同倉庫の内観

5.CLT事業への挑戦と今後の展開

―今後の展開は?

今の世の中の流れとして、地球温暖化対策にいかに貢献できるかも木造を推進していく大きな理由です。木材を利用することで、炭素の固定、材料製造時や建設時のCO2排出削減につながります。

施工を担う私達だけではなく、建築主に対しても「あなたも社会貢献ができます。だから、木造でやりましょう!」という提案を積極的にしています。

そこで、私達はCLT事業にも取り組んでいます。

今年、ツーバイフォー工法が日本でオープン化されて50年が経ちました。ツーバイフォーが日本に入ってきた時も大変でしたが、CLTは2016年に建築基準法告示が公布・施行され、一般利用がスタートして8年です。

まだ、価格が高く浸透はしていませんが、あと5年、10年したら、ツーバイフォーのように認知されて普及しているはずです。既にその兆しはあって、今、高層ビルが次々と建っています。

日本のビルディングは5階建てまでが9割と言われています。残りが6階建て以上の高層ビルディングです。やはり5階建てまでぐらいが裾野なわけです。私達は小規模の地元企業ですから、そうした裾野をターゲットにしていきたいと考えています。それで中層ビルディングに取り組もうとしています。最も需要が見込めますし、今後、新しく建つものがあるはずです。そのCLTでの中層のビルディングで5年後、10年後を見据えて、売上に占める割合を3割、4割位にまで伸ばしたいと考えています。

そして、前述のとおり、ツーバイフォーや在来工法で、一般的な1階・2階建て程度の木造の大型施設事業においても、私達の強みを活かして4割位を目指したいと考えています。

CLTもあわせて、今、そうした木造への取組みを進めています。木造ゼネコン的なトライができないかなということを考えています。木造とすることで、環境問題への対策や社会貢献に繋がるようなものに挑戦してみたいというのがあります。

当然、輸入住宅事業から離れることはありません。それを通じて、医療関係者や経営者といったいろいろな方々と出会うことができますから。その方たちから、自社ビルや自社事務所を建てたい、自社倉庫を建てたいといったお話があって、それを見た人が、また別の倉庫を…と新たなお客様を生んでくださったりと、木造施設建築の案件にも繋がります。そうやって、建築の主要三本柱を目指しています。

自分も社員も意識改革を

以前のように住宅専門でやっていた頃とは違い、今、木造施設やCLTの事業にどんどんシフトしていて、大幅にその比率を変える方向に進んでいます。

営業方法もこの1年で大きく変えました。住宅の販売を主としていた営業担当者は、勉強会を開催する等しています。日々の訪問も、金融機関や不動産会社を回り、木造施設等にアプローチをかけるようにしました。住宅中心のときには土日は出勤していましたが、平日にそうした法人や施設をターゲットとして回るので、徐々に土曜を休みにしています。

でも、住宅専門でやってきた会社が急にすべてを切り替えることは、社内の体制や意識改革を含めて非常に難しいです。一定の時間が必要です。社員も戸惑いますし、中には抵抗感を覚えて辞めてしまう人も出てしまいます。負担も大きいですから、徐々に慣らしていく、これも社長の仕事だと考えています。少しずつ「僕たち、もう住宅だけじゃ、やっぱり駄目なのかな…」というのを意識していくことで「自分もやらないといけないな」と受け止め始めてくれていると感じています。

社員のみんなには今、「大きく変わっていただかないと」と言っています。技術陣は、これまでやったことのない技術を習得していかなければいけません。今まで住宅しかやったことのない人たち、現場監督さん然り、設計の人も然りです。私も含めて、勉強のやり直しです。そして、この2、3年で技術革新をしっかり進めていく、それも社長自らが積極的に進めていくという流れを作っていかないといけません。

やはり時代の変化とともに変われる会社だけが残れると思います。いつまでも10年、20年前の感覚でいる人たちは多分取り残されて、いずれ去っていくことになります。変われる人と企業になるということです。意識を変えないといけません。そんなふうに考えています。

株式会社フォレストヴィラホーム
所在地:〒811-1312 福岡県福岡市南区横手南町2番18号
設立:2008年1月4日
全国の加盟店で競われるセルコホーム オールセルココンテスト設計コンテストで、2024年は戸建の外観部門をはじめ、全部門で優秀賞受賞。過去にも受賞多数。
グループ会社である「ジールクラフト」は、木造住宅建築と特殊建築を施工する次世代の大工集団として、木工技術を継承に力をいれ、あらゆる工法の建築施工を多数手がける


一般社団法人 住宅あんしん検査では、非住宅木造建築物向け「あんしん建物検査・保証制度」の資料請求や見積もりのご相談等を次のフォームより承っております。お気軽にお問い合わせください。

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