連載コラム「非住宅木造建築」 地域工務店が建てる非住宅木造建築とは?(第3回)

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
連載コラム「非住宅木造建築」 地域工務店が建てる非住宅木造建築とは?(第3回)

 今回で3回目のコラムとなりました。 最後に、具体的にどのような用途の建築物で木造が活用されているか、その特徴と合わせてご紹介いたします。
 弊社の事例を始め、住宅をメインとする工務店に対して、非住宅木造建築の取組みを支援する「地産木造ビル推進本舗」の実物件になります。
 また、最後にさらに実際に住宅工務店が非住宅木造に取り組む為の、様々なサービスもご紹介いたします。

木造を活用した建築物の例

福祉施設

 木造非住宅建築で、一番採用率が高く実例が多いのが、福祉施設です。ひと口で福祉施設と言っても、保育園、高齢者施設、グループホーム、学童保育施設など、詳細な用途は様々です。
 さらに高齢者施設の中でも、住宅型老人ホーム、サービス付き高齢者住宅(サ高住)、デイサービス、宿泊型(ショートステイ)、特別養護老人ホーム、ホスピスなど、さらに様々で、事業者の運営、利用者の使い方などにより呼び方が変わります。
 実務面では、例えば住宅型老人ホームとサービス付き高齢者住宅では、同じ高齢者の方を対象とした住む施設ですが、所要室や行政での取り扱い部署が違うことから、業務の許可申請の手順が異なる場合もありますのでご注意下さい。

とうふう苑(高齢者複合施設)
 デイサービス、ショートステイ(宿泊型)、サービス付き高齢者住宅の複合施設です。3階建て耐火構造の建物です。

とうふう苑(高齢者複合施設) 外観 とうふう苑(高齢者複合施設) 内部

ファミリーホスピス北山
 4階建ての耐火構造の建物になります。省エネ性も高く、ZEB Ready相当の省エネ性能を確保しています。

ファミリーホスピス北山 外観

ファミリーホスピス北山 内部

事務所ビル(店舗併用含む)

 一棟全部を一つの会社で使う自社ビルとしてのケース、いわゆるテナントビルとして、部屋毎・フロア毎で貸すケースなど、事務所ビルの用途の中でも少しケースは分かれます。近年は、大企業が自社ビルとして本社建物を木造として建築し、環境イメージ・先進的なイメージを発信する為に利用する側面も見られます。
 面積にもよりますが、3階建て・高さ10m以内でしたら、準防火建築物でも建築可能なケースがほとんどな為、中小規模でしたらコストメリット面もあります。

SUBACO(店舗併用事務所ビル)
 1階はカフェと貸会議室、子育て支援のNPOが使用、2階、3階一部は自社ビル、残りは貸事務所としているテナントビルです。1階はRC造、2~5階は木造の混構造になります。

SUBACO(店舗併用事務所ビル)

京タンス事務所
 3階建ての自社使用の事務所ビルになります。自社利用の為、間仕切りも少なく、広い空間の確保が行われています。

京タンス事務所 外観

京タンス事務所 内部

伏見酒造組合
 月桂冠、黄桜など大手の酒造会社が並ぶ酒どころの組合建物になります。隣接する金融機関の外装デザイン・外装工事と合わせて受注し、酒蔵をイメージする地域の街並みデザインも実現しています。

伏見酒造組合 外観1

伏見酒造組合 外観2

兼用住宅

 自宅兼用店舗または事務所、低層部が店舗、上層部が賃貸住宅のいわゆる下駄ばきアパートなど、福祉施設と並んで、木造建築物の案件多いカテゴリーです。また、住宅要素を含むため、住宅工務店が一番建てやすい戸建て以外の木造建築になると考えます。
 4階建て以上は耐火建築物になるのですが、コストメリットも発揮されますので、S造、RC造との競合の際も有利に商談が進めやすく、採用は非常に進んでいます。

MIYUプロジェクト
 1階は店舗、2~4階は賃貸住宅の4階建てです。

MIYUプロジェクト

木屋町のはりビル
 5階は住宅、4階は自社事務所で、1~3階は賃貸オフィス・店舗の建物になります。近隣条件が厳しい、狭小間口に建つペンシルビルでも木造の採用は可能です。

木屋町のはりビル

工場

 従来、建物での差別化をしにくいカテゴリーでしたが、木造の事例が出てきたことから注目度は高くなっています。

OKADA自動車
 国道沿いに建つ、車検・自動車リースショップも兼ねた、自動車修理工場です。 間口の大きい開口、シャッターも他構造と遜色なく取付け可能です。 オイルなどの可燃物も耐火構造での区画設置を行うことで取り扱い可能です。
 「環境に優しい自動車工場」として、会社のブランディングにも活用されています。 他にもトラス構造を活用した大規模な倉庫なども木造化の事例が進んでいます。

OKADA自動車 外観

OKADA自動車 内部

最後に

 これまで非住宅木造の様々な法整備、メリットや特長、具体的な案件などをご紹介させていただきましたが、他の実務面においても非住宅木造の為のサポートも拡大し、事業環境においても非住宅木造は取り組みやすくなってきています。
 手前ミソですが、私たちは「地産木造ビル推進本舗」という地域工務店が非住宅木造に取り組む際の、営業・ブランディングから設計・施工の様々な実務支援・アドバイスを行うサービスを展開しています。 もちろん私たちの他にも、受注支援に特化したサービス、事例の共有と勉強会を中心としているグループなどがあります。
 また、住宅あんしん保証のグループ会社、一般社団法人住宅あんしん検査では、非住宅木造建築物向けの検査・保証サービスを全国に展開されています。住宅よりも高額な請負を行う中で、第三者機関の検査・保証サービスはお客様にはもちろんですが、工務店にも安心感が生まれます。他にも、住宅の地盤保証サービスが木造中高層の範囲まで拡充されている会社なども見られます。

 是非、これを機に、新しい取り組みに踏み出す地域工務店の方々、それを支える建材卸をはじめ、様々な形で建築に関わる方々の少しでも足しになれば幸甚です。
 3回にわたるコラムにお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

連載コラム「非住宅木造建築」 地域工務店が建てる非住宅木造建築とは?
第1回 第2回 第3回


市川 宣広(いちかわ のぶひろ)氏

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

お問い合わせ

よくある質問

皆様から多く寄せられる質問をまとめています。
お問い合わせの前にぜひご覧ください。

よくある質問を見る

問い合わせ先一覧

お問い合わせ・ご相談は、電話またはWEBフォームで承っております。
下記の問い合わせ先一覧から、該当する宛先にお問い合わせください。

問い合わせ先一覧を見る

お問い合わせ