中古住宅の売買で「瑕疵保証(かし保証)」が受けられるの?(住宅あんしん検査編)

新築住宅の価格上昇を受けて、中古住宅の取得がより注目されるところです。新築住宅の取得においては、売主等が引渡しから10年間にわたり基本構造部分の「瑕疵(かし):不具合・欠陥」に対して責任を負うことが法定され、この責任が確実に果たされるよう「かし保険」への加入等が義務付けられるなどの制度があり、買主等の保護が図られています。他方、中古住宅の取得においてはどのような制度があるのか、まだ広くは知られていないと言えるでしょう。
中古住宅をあんしんして売買する上で知っておきたい事項として、特に中古住宅の引渡後に発覚した「瑕疵(かし):不具合・欠陥」に対応するための保証制度等についてご紹介します。
この記事におけるポイント
この記事は、中古住宅の売買における「瑕疵保証」の制度について説明しています。特に、個人間売買の場合の保証制度や、一般社団法人住宅あんしん検査が提供する「瑕疵保証(かし保証)」の流れと特徴について紹介しています。
この制度を利用することで、中古住宅の売買におけるリスクを軽減し、買主にあんしんを提供することができます。
- 宅建業者が売主となる場合
- 宅建業者は「契約不適合責任」を2年以上負うことが法律で定められており、引渡し後に「発覚した瑕疵(かし)」について、買主は補修などを求めることができます。
- これに対し、売主である宅建業者は瑕疵保険(かし保険)に加入することで、保証を確実にすることができます。
- 個人間売買の場合
- 個人間売買では、「契約不適合責任」の有無や期間は売買契約の内容によります。売主が責任を負わないと定めた場合、引渡後に発覚した瑕疵(かし)は買主が自己負担で対応しなければなりません。
- 一般的に、雨漏り、木部の腐食、給排水管の故障、シロアリの害などが対象となり、引渡後3ヶ月程度の保証が規定されることが多いです。
- 一般社団法人住宅あんしん検査の瑕疵保証(個人間売買に対応)
- 住宅あんしん検査は、新耐震基準を満たす中古住宅に対して検査を行い、瑕疵保証を提供します。まず、不動産会社を通じて検査を依頼し、劣化事象等が確認された場合には、引渡前に補修が必要です。
- ただし、「引渡後修補型『あとから瑕疵保証』特約」により、買主が引渡後に補修を行うことで、瑕疵保証を利用することも可能です。
1.宅建業者(宅地建物取引業者)が売主となる中古住宅の売買
宅建業者が売主(売買の媒介・仲介者ではなく売主)となる中古住宅の売買の場合、売主は2年間(以上)の「契約不適合責任」を負うことが宅建業法で定められており、引渡しから2年内に発覚した「瑕疵(かし)」について、その補修等を売主に求めることができます。
なお、売主はこの責任を確実に果たせるようにするため、かし保険に加入することを検討できます。(保険法人である株式会社住宅あんしん保証(以下「住宅あんしん保証」)が引受ける「あんしん既存住宅売買瑕疵保険」/ただし、対象は新耐震基準等を満たす中古住宅に限定)
かし保険の加入にあたっては、引渡前に保険法人(住宅あんしん保証)による検査が実施され、検査で劣化事象等が見つかれば、引渡前にその補修等が必要です。また、検査を完了し、かし保険に加入となった場合は、引渡日から保険期間が終わるまでの間に「瑕疵(かし)」が発覚し、補償対象となる損害が生じた場合に、その損害に対して売主に保険金が支払われるため、売主は補修等の対応を行うことができます。
万が一、売主が倒産等の場合には買主が直接、保険法人(住宅あんしん保証)に補修等に要する損害に対して保険金支払いを請求することができるため、これをもとに補修等を行うことができます。
そのため、保険加入者である売主にとっても、また買主にとっても、かし保険の利用は売買のあんしんにつながるものと言えるでしょう。
2.宅建業者(宅地建物取引業者)「以外」の者が売主となる中古住宅の売買
宅建業者「以外」の者が売主となる中古住宅の売買の場合、いわゆる「個人間売買」の場合、「契約不適合責任」の有無やそれが有った場合の対象や期間は、売主・買主が締結する売買契約の定めによります。よって、売買契約において契約不適合責任を負わない旨を定めた場合、引渡後に発覚した「かし」について買主は売主に対して責任を追及することができず、自己の負担で補修等の対応が必要になります。
2-1.瑕疵保証
中古住宅の個人間売買の場合、一般的に建物については以下を対象として、引渡後3ヶ月程度の「契約不適合責任」が規定されることが多いようです。
- 雨漏り
- 建物構造上主要な部位の木部の腐食
- 給排水管の故障
- シロアリの害
この点、引渡後の「かし」の発覚に備えて、かし保険を利用した「瑕疵保証」サービスを受けることを検討することが有用です。売買の媒介・仲介を行う宅建業者(仲介事業者)や、売買対象住宅の検査を行う検査事業者が、かし保険(保険法人である住宅あんしん保証が引受ける「あんしん既存住宅個人間売買瑕疵保険」)に加入して、引渡後、1年~5年間の瑕疵保証を買主に提供するサービスがあります。
一般的な瑕疵保証においては、契約不適合責任の対象とされる上記の4つのうち、「シロアリの害」以外の事象(構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分の瑕疵、給排水管路に関する特約が付される場合はこれに加えて給排水管路の瑕疵)が保証の対象となります(保証契約約款等の約定により、保証の対象とされる部分・範囲等に限られます)。
よって、瑕疵保証を利用する場合は、売買契約において、売主が負う建物にかかる契約不適合責任を免責としたり、引渡後3ヶ月間における「シロアリの害」のみに限定したりすることを特約として定めるケースがあります。
なお、シロアリの害は瑕疵保証において免責事由となることが一般的であり、このリスクに対しては、床下点検を依頼する、防蟻工事を実施するなどの対策が有用です。
2-2.一般社団法人住宅あんしん検査が提供する瑕疵保証
ここでは、住宅あんしん保証グループの検査事業者である「一般社団法人住宅あんしん検査(以下「住宅あんしん検査」)」が提供する瑕疵保証(※)の利用の流れと特長について説明します。(【図1】参照)
※この瑕疵保証は対象住宅が新耐震基準等を満たす中古住宅である場合に限定されます。また、宅建業者「以外」の者が売主となる中古住宅の売買の場合を対象としています。
2-2-1.不動産会社を通じて検査(建物状況調査)を依頼する
中古住宅の売買にあたり、瑕疵保証を利用したいという場合、まずは検査事業者である住宅あんしん検査に対象住宅の検査(建物状況調査)の実施を依頼します。
対象住宅の売買の媒介・仲介を依頼する不動産会社は、検査(建物状況調査)の実施者=検査事業者を「あっせん」する立場となりますので、不動産会社に相談・手配を依頼してみましょう。そもそも検査では、必要な書類等があるため、売主や買主ではなく、不動産会社を通じて検査事業者に検査を依頼するのがスムーズです。
その上で、検査事業者は売主(所有者)の承諾を条件に、対象住宅の検査を買主への引渡前に実施します。検査にかかる料金は、売主または買主が負担する場合のほか、売買を媒介・仲介する不動産会社がサービスとして全額または一部を負担する場合がありますので、不動産会社に確認しましょう。
2-2-2.瑕疵保証を申し込む
検査(建物状況調査)の結果、劣化事象等の有無が判定されます。劣化事象等が「有」の場合、住宅あんしん検査が瑕疵保証を提供するには、買主への対象住宅の引渡前に当該箇所を補修する等の対応が必要です。必要な補修等がなされた場合、または劣化事象等が確認されなかった場合は、瑕疵保証の加入手続に進みます。引渡前に、住宅あんしん検査に瑕疵保証を申し込みます。住宅あんしん検査は、保険法人である住宅あんしん保証にかし保険を申し込み、審査・確認を受け、瑕疵保証の利用が確定します。
対象住宅の引渡後、所定の期間(1年、2年、5年間のいずれか)にわたり、住宅あんしん検査は買主に対して瑕疵保証を提供することとなります。保証期間中の保証限度額は、500万円または1,000万円です。
2-2-3.劣化事象等が見つかった場合の対応
前述のとおり、住宅あんしん検査が検査(建物状況調査)を実施して劣化事象等が確認された場合、瑕疵保証を提供するには対象住宅の引渡前に劣化事象等の補修等を行わなければなりません。
引渡前の補修となると住宅の所有者である売主が費用を負担して実施することを余儀なくされるのではといった懸念があります。また、売主が居住中の場合や引渡日が迫っており、日程的に補修が困難な場合もあります。
このような理由から、瑕疵保証の利用を希望しても断念せざるを得ないケースは十分に考えられます。
そこで、住宅あんしん検査の瑕疵保証では、検査(建物状況調査)の実施と引渡前の瑕疵保証申込みを条件に、対象住宅の引渡後に買主が補修を行うことでも、瑕疵保証が受けられるしくみ(「引渡後修補型『あとから瑕疵(かし)保証』特約付帯」)を設けています。
これは、多くの人に知っていただきたい「検査(建物状況調査)で劣化事象等が確認されても、売主ではなく買主が補修することで瑕疵保証を利用できる」という住宅あんしん検査の瑕疵保証の特長です。(【図2】参照)
「あとから瑕疵保証」特約とは?
中古住宅の売買では、対象住宅の引渡しを受けてから、買主がさまざまなリフォームを行うことが少なくありません。
住宅あんしん検査の瑕疵保証では、「あとから瑕疵保証」特約の付帯によって、買主が引渡後に実施するリフォームに、事前の検査(建物状況調査)で確認された劣化事象等の補修を含めることで、買主の意思でリフォーム・補修することができます。
具体的には、引渡後、買主が希望する施工会社によって6ヶ月以内に補修を完了し、リフォーム・補修の内容に応じて、住宅あんしん検査の追加検査等により補修完了の確認を得ることで、それ以降の期間において瑕疵保証が受けられます。(引渡しから補修完了の確認を得られるまでの間は免責期間となり、保証は受けられません。)
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3.瑕疵保証を利用するメリット
中古住宅の売買を検討している人の中には、対象住宅について検査(建物状況調査)がなされていることを説明され、かつ特段の劣化事象等が確認されなかった(または確認された劣化事象等の補修がなされている)場合に、あえて追加の費用負担をしてまでこうした「瑕疵保証」までは不要だと考える人もいるかもしれません。
しかし、検査(建物状況調査)は目視・計測等により、非破壊を前提に行うことが通常であり、目視では確認できなかった劣化事象等が、引渡後に発覚することもあります。住宅の「かし」は、火災保険等では補償されませんし、例えば引渡後に雨漏りが発覚した場合、中古住宅で築年数が経過しているほど、実は広範囲に被害が拡がっており、補修にあたり数百万円の負担を強いられることもあります。大切な住まいの取得であればこそ、利用しておくべき制度と言えるでしょう。
また、売主にとっても、瑕疵保証を利用せず、引渡後に数ヶ月であっても契約不適合責任を負う期間において「かし」が発覚した場合は、同様に補修費用の負担等の不測の出費が生じる可能性がありますので、瑕疵保証の利用は売主のあんしんにもつながります。
さらに、瑕疵保証では、売主・買主間の売買契約のトラブル等においても、電話相談や専門家相談を利用できたり、1万円の負担だけで「住宅紛争処理制度」を利用できたりといった制度が整えられています。後悔のないあんしんの取引実現のためにも、検査(建物状況調査)が実施されている場合こそ、瑕疵保証の利用も検討するべきでしょう。
4.瑕疵保証の利用にむけて―まとめ
瑕疵保証を利用することは売主・買主双方にとってのあんしんにつながります。
検査(建物状況調査)により劣化事象等が確認されても、住宅あんしん検査であれば、当事者の意向に沿った補修を選択した上で瑕疵保証を受けることができます。
引渡前の検査(建物状況調査)は売主(所有者)の承諾を得なければ実施できず、また、耐震基準等を満たしていることが確認できる書類を準備する等、一定の手続が必要なため、売主・買主が瑕疵保証の利用を希望する場合には、売買の媒介・仲介を依頼する不動産会社から、住宅あんしん検査に相談していただくのがスムーズです。
なお、住宅あんしん検査では別途「建物状況調査」「既存住宅個人間売買瑕疵保証」の商品説明ページをご用意しています。また、同ページでは「建物状況調査と保証のご案内」パンフレットを売主向けと買主向けそれぞれ掲載しておりますので、そちらもあわせてご参考にしてください。
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