住宅事業者が提案に取り入れるべき「住まいを長持ちさせる方法」とは?―第6回 定期点検における確認ポイント 建物外部編(4)基礎まわり

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住宅事業者が提案に取り入れるべき「住まいを長持ちさせる方法」とは?―第6回 定期点検における確認ポイント 建物外部編(4)基礎まわり

 住宅あんしん保証は、新築住宅に関する雨水の浸入による被害(以下「雨漏り事故」)を未然に防ぐため、かねてより届出・登録事業者の方に向けて雨漏り事故の傾向や雨漏り事故を防止するための情報提供に取り組んでいます(そのひとつが、連載「目指せ、雨漏り事故ゼロへの道‼」)。
 近年は、既存住宅、具体的には新築から10年を超えるような戸建住宅に関して、住宅の所有者または買主が安心して、長く住み続けていただくための情報提供にも力を入れています。
 この連載では、これらの取組みの一環としてだけではなく、住宅事業者が自社のリフォーム工事の受注につなげていくために住宅の所有者である顧客への提案に取り入れるべき持ちさせる方法』を、住宅の点検やメンテナンス工事、保証サービス等を通じてご紹介します。

1.住まいの定期点検

 「定期点検」の確認ポイントなどについて、部位ごとに分けて取り上げています。木造戸建住宅の建物外部編―(1)外壁まわり・開口部まわり(2)屋根まわり(3)バルコニーまわりと詳しくみてきました。建物外部編の最後である4回目は、基礎まわりについて、構造などに関する具体的な点検内容および確認が求められる劣化事象等の事例(※)をご紹介します。
 特に、築10年を超えた戸建住宅の「定期点検」では、基礎まわりとあわせて床下内部の基礎コンクリートの劣化事象等の状況などを確認しておくことで、メンテナンスの要否とその時期、そして補修費用の目安を把握する判断材料にもなりますので、住宅の所有者へのメンテナンス工事の提案に繋がります。

【図】構造と防水に関する点検部位

※点検内容と劣化事象等の事例
 次に掲載する内容は、中古住宅向け売買かし保険(住宅あんしん保証の「あんしん既存住宅売買瑕疵保険」)における木造戸建住宅の現場検査基準の内容と指摘対象(保険加入に際して補修などが必要な不具合)となる主な劣化事象等になります。
 築年数の古い(築25年以上)木造戸建住宅の現場検査では、約7割の物件で劣化事象等が確認され、その多くは、将来的に雨漏りの原因となる可能性があります。

2.基礎まわりの点検内容と劣化事象等の事例

 基礎まわりは屋根や外壁とは異なり、日頃から住宅の所有者自ら目視しやすいとされていますが、基礎表面の化粧モルタルなどのひび割れや劣化に注意がいきがちで、構造体である基礎コンクリート自体の劣化事象等の確認まではなかなか行き届かないようです。
 住宅事業者の皆様が行う定期的な点検では、基礎まわりの確認とあわせて日頃確認ができていない床下内部の基礎コンクリートの劣化やシロアリの痕跡など構造耐力性能に影響を及ぼす不具合にも注意して確認する必要があります。さらに、給排水設備の点検を行う場合には基礎まわりの点検とあわせて敷地内排水桝の内部について目視による排水状況の確認などを実施することも考えられます。

2-1.点検方法と結果の記録

 基礎コンクリート表面の劣化状態および外壁水切りとの取合いの不具合などについて、基礎まわりおよび床下内部の目視可能な範囲を点検します。
 基礎外側は表面に化粧モルタルなどが塗られていることが多く、表面だけにひび割れが発生しているのか、その下のコンクリートまでひび割れているのかなどの判断が難しい場合があります。そこで、床下内部の点検で基礎コンクリートの室内側の劣化状況を確認することで、より正確に現在の状態を把握することができます。
 劣化事象等が確認された場合は、その記録として、事象ごとに番号をつけて、部位、事象の状況、範囲・程度を平面図や基礎伏図などに記載・記録することをお勧めします。同様の劣化事象等が複数ある場合には、最も劣化している部分など代表的箇所の状況を記録します。
 また、劣化事象等の記録写真は、図面記載の内容と照合できるように番号をつけた部位の遠景、中景、近景を必要に応じて組み合わせて複数枚を撮影しておきましょう。

基礎コンクリート表面のひび割れ幅の確認 床下点検口より床下内部の確認 外壁水切りとの取合いの確認 敷地内排水桝の排水状況の確認

【使用する主な道具】

  • クラックスケール(ひび割れの幅の計測用)
  • ピアノ線、細い針金(ひび割れの深さや化粧モルタルの厚さの計測用)
  • 点検鏡(水切り裏側部分など細部の確認用)
  • 打診棒(化粧モルタルなどの浮きの確認用)
  • 懐中電灯(床下内部の暗い部分の確認用)
  • スケール(劣化事象等の長さや範囲などの計測用)
  • 鉄筋探査機(鉄筋の有無、本数、間隔の計測用)
  • マスキングテープ(鉄筋の位置のマーキング)
  • デジタルカメラ(記録写真の撮影、ズーム機能で目視困難な上階部分や細部の確認用)
  • 毛布や敷布類(床下点検口の蓋を置く際の養生用)

2-2.確認が求められる劣化事象等

 基礎まわりの主な劣化事象等について、それぞれのポイントを確認してみましょう。

2-2-1.基礎コンクリートのひび割れ、欠損

 基礎コンクリートの劣化事象等で一番多く発生、確認されるのは、ひび割れになります。ひび割れを発見した場合、クラックスケールを使って、下の写真のようにひび割れに重ねるようにしてその幅を測ります。
 一般的には、ひび割れ幅を目安にして、その劣化状況を判断します。

  • 0.3mm未満のひび割れ:「ヘアークラック」と呼ばれ、構造的には問題がないとされています。
  • 0.3mm以上0.5mm未満のひび割れ:注意が必要で補修をしたほうがよいとされる「構造クラック」と呼ばれ、建物に不具合が発生している可能性が考えられます。
  • 0.5mm以上のひび割れ:構造体への影響の確率が格段と上がり、住宅の傾きや外壁のひび割れなど様々な部位に不具合が発生していることがあります。

 また、ひび割れの発生方向を参考にして、その原因を推定する場合もあります。

  • 縦方向のひび割れ:ひび割れの多くは縦方向に発生し、中でも幅が小さい「ヘアークラック」は乾燥収縮によるものが多いとされています。
  • 水平方向のひび割れ:水平方向に入っているひび割れは、乾燥収縮によるものではなく、応力が集中して発生している可能性が高いとされています。そのひび割れの上部の外壁などにもひび割れなどの不具合が発生していないか確認する必要があります。
  • 八の字方向のひび割れ:八の字の方向に発生しているひび割れは、不同沈下に起因する可能性が高いとされています。

 なお、基礎の外側表面に化粧モルタルなどが塗られている場合は、その下のコンクリートまでひび割れているのか確認するため、ピアノ線を差し込んで深さを計測します。ピアノ線には、約10㎜(化粧モルタルの厚さが判断できない場合10㎜程度と仮定)の位置に油性マーカーでマーキングしておくことで、そのひび割れ深さを推測しやすくなります。

ひび割れ幅をクラックスケールで計測 ひび割れ深さをピアノ線で推測 床下換気口の角から貫通するひび割れ 床下点検口から確認したひび割れ

2-2-2.基礎コンクリートの欠損、鉄筋の露出

 基礎コンクリートの劣化事象等で深さが20㎜以上の欠損は注意が必要で鉄筋が露出する可能性が高いため補修をすべきとされています。
 一般的に、基礎コンクリートの鉄筋が露出している状態はかなり深刻な状態になっている場合がほとんどです。この状態はコンクリートの断面積が不足したり、鉄筋が著しくさびたりするため、早急に構造的改善を目的とした基礎補強が必要です。
 なお、鉄筋の露出する原因のひとつに「爆裂(ばくれつ)」があります。
 爆裂とは、内部の鉄筋がさびることで膨張し、その圧力によりコンクリートを内側から押し出すように破壊する現象です。
 基礎内部の鉄筋は、主成分をセメントとするコンクリートのアルカリ性によって、その表面に「不動態被膜(ふどうたいひまく)」と呼ばれる薄い被膜が形成されているので、通常さびることはありません。
 コンクリートの内部は打設して硬化した直後は強いアルカリ性を示していますが、経年とともにアルカリ性を失い、中性へと傾いていきます。この中性化はコンクリート表面から徐々に深くまで進行します。
 もちろん、基礎コンクリートに発生したひび割れなどの劣化事象を放置してしまうと、そこから空気中の炭酸ガスが入り込むためコンクリートの中性化を早めることになります。そして、コンクリートの中性化が鉄筋まで到達すると「不動態被膜」が失われ、鉄筋はさびはじめてしまうのです。

床下換気口周囲コンクリートの欠損 基礎鉄筋の露出

2-2-3.基礎コンクリート表面の劣化など

 基礎コンクリート表面にエフロレッセンスや水シミなどが確認された場合は、水分が浸入していたり湿気が多い可能性があります。基礎コンクリートに水分が浸入してしまうと、基礎コンクリート表面の劣化や内部の鉄筋がさびてしまう可能性があります。
 エフロレッセンスとは、雨水などの水分がコンクリート内に浸入し、モルタル中の可溶性物質(水酸化カルシウム)と混じってひび割れなどからにじみ出し、それが空気中の炭酸ガスと反応して白く盛り上がったように固まる現象です。この現象自体は美観上の問題はあるものの、コンクリート強度に直接影響を及ぼしたりするものではありませんし、この白い物質自体は無害とされています。そういう意味では、補修の緊急性の高い事象ではないかもしれません。
 しかし、エフロレッセンスが発生しているという事は、どこからか浸入した水分によってコンクリートのアルカリ成分が流れ出し、コンクリートの中性化が進んでいる可能性があり、放置してしまうと内部の鉄筋がさび、構造耐力性能の低下に繋がる恐れがあります。
 その他、コンクリート表面の劣化の原因のひとつに「アルカリ骨材反応」があります。
 アルカリ骨材反応とは、コンクリートの細孔溶液中の水酸化アルカリ(KOH や NaOH)と、骨材中のアルカリ反応性鉱物との間の化学反応を言います。コンクリートがみずから膨張し、亀甲状のひび割れを生じさせ、基礎コンクリートの強度を低下させてしまう劣化現象です。
 基礎の外周表面に化粧モルタルなどが塗られている場合、モルタルの浮きなどの劣化状態は打診棒で表面を叩いて確認します。モルタルの浮きがある箇所を叩くと軽い音がします。モルタルの浮きだけだと基礎コンクリートの構造体には影響がありません。しかし、モルタルの浮きが深刻である場合、浮いている箇所から少しずつモルタルがはがれていきます。モルタルがはがれることによって住宅の美観を損ねることや基礎コンクリートの劣化を早める可能性があります。

基礎コンクリートの広範囲の劣化 雨水の浸入による外壁下端水切りまわりの腐食 コンクリート表面のアルカリ骨材反応

2-2-4.シロアリの痕跡

 蟻道などシロアリの痕跡は目視により確認できます。基礎まわりや床下内部に蟻道が確認された場合は、すでに建物の中にシロアリが侵入している可能性があります。木造住宅がシロアリ被害にあうと、構造体である柱や土台などの木部が食べられることで耐震性が低下してしまう危険があります。基礎まわりなどに蟻道などシロアリの痕跡を発見した場合は、早めにシロアリ専門業者に調査や駆除を依頼することをお勧めします。

基礎まわりで確認された蟻道 床下内部で確認された蟻道

2-2-5.基礎仕様の確認

 メンテナンス工事などをきっかけに接点を持つようになった顧客に対する定期的な点検においては、基礎まわりの点検項目のひとつとして、新築時の”基礎仕様の確認”を行うことが考えられます。
 新築時の基礎仕様は「建築確認申請書」や「設計図書」、「仕様書」などから確認することができます。基礎伏図は床下に通る基礎立ち上がりの配置が記されている図面で、この図面を見ることで外側からでは見ることができない床下内部の基礎の構造配置を確認できます。
 また、基礎伏図には、基礎立ち上がりや底盤の鉄筋の太さ、その配筋間隔が示された基礎配筋詳細図なども記載されていることがあります。
 新築時の基礎仕様が確認できたら、あわせて「鉄筋が正しく配筋されているか」「コンクリートの被り厚さは設計図書どおりか」などの施工状況を確認することも考えられます。
 基礎配筋の非破壊検査の方法のひとつに「建物状況調査」(※)で定められている計測方法がありますので、参考にしてください。

※「建物状況調査」とは、国が定めた「既存住宅状況調査方法基準」に基づき、既存住宅の基礎、外壁等の部位毎に生じているひび割れ、雨漏りなどの劣化事象等の状況について、既存住宅状況調査技術者資格を有する建築士が目視・計測等により調査するものです。

一般社団法人住宅あんしん検査の「建物状況調査」はこちら»

【鉄筋探査機での計測確認方法】
計測部位:基礎立ち上がり外側および底盤(ベタ基礎のみ 床下点検口を利用して計測)
計測箇所数:建物X方向、Y方向の各1箇所(1箇所あたりの範囲は長さ1m程度で縦筋4ピッチ以上)

  • 新築時の設計図書等と照合し、本数が図面通りで、配置のピッチ誤差が±30%以内であることを確認する
  • 設計図面が無い場合、立ち上り部の縦筋、底盤の鉄筋ピッチは@300㎜以下を目安とする
  • 本計測が不可能(基礎高が低い、底盤部に防湿コンクリート施工等)な場合、近隣の基礎、当該敷地周辺の地盤を目視し、当該既存住宅に有害な地盤沈下等が発生していないことを確認する

鉄筋探査機で鉄筋の有無とその位置を確認 鉄筋位置の間隔を計測

2-3.点検のポイントと注意事項など

 住宅の所有者自らの確認や住宅事業者の皆様が行う定期的な点検では、次の事項も参考にしてください。

  • 床下換気口や設備配管貫通孔など基礎立ち上がりの貫通部周囲は、ひび割れが発生しやすいです。なお、貫通部周囲や基礎立ち上がりコーナーに発生しているひび割れは、補強筋不足の可能性が考えられます。
  • 基礎表面の化粧モルタルが剥がれ落ちるなどの危険性がある場合には打診は行いません。
  • 基礎コンクリートの立ち上がりが低いと床下換気口などから浸水してくる可能性があります。床下換気口などから浸水しやすい状態は基礎コンクリートの劣化を早めたり、シロアリの被害や土台にカビや腐朽が起きる危険があります。
  • 床下内部の進入調査を行う場合の注意事項は次のとおりです。
    • あらかじめ 平面図や基礎伏図を確認して調査経路をシミュレーションしておき、進行方向を右回り、左回りと決めておくと迷わずに点検できます。
    • 床下へ潜る際には出口を見失ってしまわないよう、点検口がある場合には開けたままにして光が差しこむようにしておきます。なお、住宅の所有者などが踏み外して落下しないように、事前に声掛けしておくなどの配慮も大切です。
    • 床下は狭く、ほふく前進で点検を行うため木材のささくれや床材から出ている釘などで怪我をしないように、素肌が出ないつなぎの作業服などを着用、頭にはヘルメットや帽子をかぶり防護します。
    • 床下は光が入らず暗いため、懐中電灯が必要になります。ヘッドライト付きのヘルメットがあれば、両手が空いて作業しやすくなります。
    • 床下の状態を記録しておくためにデジカメを用意します。ほこりや砂などが入り故障してしまう可能性があるので、透明の袋に入れるなどの防塵対策が必要です

3.まとめ

 定期点検における確認ポイント 建物外部編最後となる今回は、建物外部のうち「基礎まわり」の点検内容や注意点について、具体的な劣化事象等を交えながら解説しました。

 これまで、木造戸建住宅の建物外部に関する点検部位として「外壁まわり・開口部まわり」「屋根まわり」「バルコニーまわり」「基礎まわり」と4回に分けて、それぞれを詳しくみてきました。いずれの部位においても、定期的な点検や適切なメンテナンスは欠かせません。特に「見えない、見えにくい、見落としがちだからこそ」、定期点検による早期発見と対策がより重要と言えるのではないでしょうか。

 次回は、建物内部の定期点検を取り上げます。建物内部編では構造と防水に関する点検部位で日頃から目視確認しやすい「壁・天井仕上げの状況」や「床材の状況」の確認とあわせて日頃確認ができていない「小屋裏」や「床下」などの点検内容について詳しくみていきます。是非、ご覧ください。

連載コラム 住宅事業者が提案に取り入れるべき「住まいを長持ちさせる方法」とは?
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