連載コラム「非住宅木造建築」 地域工務店が建てる非住宅木造建築とは?(第2回)

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連載コラム「非住宅木造建築」 地域工務店が建てる非住宅木造建築とは?(第2回)

 第1回コラムでは、主に非住宅木造建築の普及について書かせていただきました。
 今回は「地域工務店が建てる非住宅木造建築」について、お話を深めていきたいと思います。
 以後、このお話の中では、「工務店」は専ら木造住宅を建築している建設業者を指しているとご理解下さい。さらに、地域に根付いて営業されている工務店を「地域工務店」と表現しています。
 主な内容としては、次の3点を書かせていただきます。

1.「耐火木造建築」のハードル

 一般的にゼネコンは、非住宅建築をはじめとする大規模建築のS造・RC造には慣れていますが、木造には慣れていないと言われています。
 対して、工務店は木造には慣れていますが、大規模建築には慣れていません。
 また、非住宅木造に取り組むにあたって、ゼネコン、工務店いずれもハードルに感じるのが、「耐火木造(木造で耐火建築物とする)」です。耐火木造は、比較的新しい法制化なので、双方とも馴染みが薄いものになります。

 整理すると、非住宅木造に取り組むためには、

  • ゼネコンは、木造と耐火木造のノウハウ
  • 工務店は、非住宅の知識と耐火木造のノウハウ

 双方とも、2つのハードルを越える必要があることになります。

 もちろん、非住宅の用途は老人ホームやデイサービスなど住宅に近い建物もある為、工務店でも取り組みやすいカテゴリーの非住宅がある反面、工場や大型の倉庫など、あまり工務店では馴染みが少ないカテゴリーもあると思います。
 既に、住宅に比較的近い福祉施設のカテゴリーで中小規模のものは、地域工務店が木造で建てることはもはや主流になっていると言ってもいいと思われます。
 また、工務店とゼネコンが協力して木造施設を建築するケースも見受けられます。非住宅木造建築という新しい取り組みが、従来の業界の構造も変化させるきっかけになるのはとても興味深い話です。

2.工務店が建てる木造建築の特長、メリット・デメリット

 環境に優しいイメージでクライアントに喜んでいただきやすいこと、国が木造建築を促進していることから、現在は補助金なども充実していることなどを、前回のコラムで書きましたが、今回は「工務店が建てる」非住宅木造のメリットを挙げさせていただきます。
 前項1.で、工務店が非住宅木造に取り組む際の特性(ハードル)として、「木造には慣れているが、耐火木造と非住宅の経験・ノウハウに乏しい」ということを述べましたが、逆に言うと、木造住宅を中心とする、木造建築には慣れていて、木造の建材・職人などの工務店が持つリソースを活かして非住宅木造に臨む際は、特に木造躯体のコスト・工期にアドバンテージを持つことになります。
 「早くて安い事業用建物」を木造建築で提供可能だということで、ここが工務店の建築する非住宅木造の一番のメリットになります。
 私たちも実績値として、設備部分を除いた木造のコストはRC造に比べて約3割、重量鉄骨造に比べて約1割コストダウンができ、また、工期もS造と比べて遜色ない工期が実現できています。
 いずれも、今まで木造住宅でお世話になっている建材卸業者さん、プレカット業者さん、大工さんをはじめとする様々な職方さんとの協力の賜物だといっても過言ではありません。
 このメリットを活かす為には、周辺業者さんとのコミュニケーションは重要です。
 特に、新たな仕様が出続ける耐火木造に関わる建材、福祉施設専用の建具の情報のアップデートには、建材卸業者さん、建材メーカーさんとのこまめな情報共有は欠かせません。
 ただ実際は、実務の中で新しい建材や仕様の営業の話となると、工務店の実務者の立場としてはちょっと面倒臭くて遠慮しがちになってしまいますが、日々の進歩の著しい非住宅木造は、新しい仕様の知識がコストダウン、ひいては受注につながる可能性も十分にありますので、非住宅木造への取り組みを、工務店の実務者も、建材卸業者さんも、建材メーカーさんも是非コミュニケーションのきっかけにされてはいかがでしょうか。

3.地域工務店が建てる非住宅建築の営業ソース

 非住宅木造に取り組もう、とお考えの地域工務店にとって一番気になるのは、「どうやってそんな案件を受注するのだろう?」という営業面になると思います。
 どうしても技術的な問題に焦点が当たりがちではありますが、実は一番大きなソースは、非常にベタですが「地元のご縁、ご紹介」になります。
 地域の様々なお付き合いからのお話の中で、今までは、ちょっと敬遠しがちであったり、自社案件とは考えていなかった案件が、ちょっと視点を変えてみたら、自社で受注・施工できる案件かもしれません。また、第三者の検査・保証制度を利用することによって他社との差別化を図り受注につながるきっかけになると思います。
 同時に、受注に至るには社内の実務者の協力が必須です。
 いざ、案件をキャッチできた時に、知識不足や社内での取り組みの共有意識不足で、せっかくの案件を逃してしまうことがないように、建設卸業者さん、建材メーカーさんとの情報共有や勉強会、社内での呼びかけ促進を行って、まずは案件キャッチの為の素地づくりからはじめてみてはいかがでしょうか。

連載コラム「非住宅木造建築」 地域工務店が建てる非住宅木造建築とは?
第1回 第2回 第3回


市川 宣広(いちかわ のぶひろ)氏

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