「住宅ローン減税」から見る住宅の省エネルギー性能

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「住宅ローン減税」から見る住宅の省エネルギー性能

 2022年度税制改正により住宅ローン減税の適用期限が4年間延長され、その内容が変更されることとなっています。現在、国会で関連税制法が審議されており、成立後に、所得税の確定申告における手続等の詳細が公表されますが、2022年入居から、この変更後のルールが適用されることとなります(※1)。変更後の制度の概要については、2021年12月15日付「住宅ローン減税の行方~2022年度税制改正大綱の公表~」を改めてご確認いただきたいのですが、今回は、この住宅ローン減税から見る「住宅の省エネルギー性能」に着目します。
【ご注意】2024年度税制改正により、以下にて記載している事項のうち、2024年入居からの一部制度が改正されることが発表されています。変更後の制度の概要については、2023年12月14日付「住宅ローン減税の行方~2024年度税制改正大綱の公表~」にてご紹介していますので、ご覧ください。

(※1)2020年10月1日から2021年9月30日までに請負契約が締結された注文住宅の新築、または2020年12月1日から2021年11月30日までに売買契約が締結された分譲住宅・中古住宅の取得(対象住宅に係る適用消費税率10%が対象)については、2022年中の入居であれば2022年度税制改正前の旧制度が適用されます。

1.2022年以降の住宅ローン減税と住宅区分

 2021年12月15日付「住宅ローン減税の行方~2022年度税制改正大綱の公表~」のとおり、新築住宅の住宅ローン減税額の算出における「借入限度額」は、取得対象住宅の区分ごとに定められました。具体的には、下表のとおり、2050年カーボンニュートラルの実現の観点から、認定住宅(認定長期優良住宅および認定低炭素住宅)、ZEH水準省エネ住宅(※2)および省エネ基準適合住宅(※2)について、借入限度額の上乗せが実施されます。また、注目すべきは、2024年以降に建築確認を受ける新築住宅(※3)については、省エネ基準への適合が住宅ローン減税の要件とされ、これに適合しない「その他の住宅」については住宅ローン減税が受けられません。

 借入限度額 2022年入居 2023年入居 2024年入居 2025年入居
長期優良住宅・低炭素住宅 5,000万円 4,500万円
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 3,500万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円 3,000万円
その他の住宅 3,000万円 -(※3)

(※2)「省エネ基準適合住宅」とは、現行の省エネ性能を満たす基準、すなわち、日本住宅性能表示基準における、断熱等性能等級(断熱等級)4以上かつ一次エネルギー消費量等級(一次エネ等級)4以上の性能を有する住宅が該当します。また、「ZEH水準省エネ住宅」とは、いわゆるZEH基準、すなわち、日本住宅性能表示基準における、断熱等性能等級(断熱等級)5以上かつ一次エネルギー消費量等級(一次エネ等級)6以上の性能を有する住宅が該当します。いずれも住宅ローン減税申請手続(入居年分の所得税の確定申告)において、これらを示す証明書類(「建設住宅性能評価書の写し」または「住宅省エネルギー性能証明書」のいずれか(2022年7月追記))の提出が求められます。(断熱等性能等級(断熱等級)は、結露の発生を防止する対策に関する基準を除きます。(2022年7月追記))
(※3)2024年~2025年に入居する「その他の住宅」について:2023年12月31日までに建築確認を受ける住宅または登記簿上の建築日付が2024年6月30日以前の住宅については、借入限度額2,000万円、控除期間10年間として住宅ローン減税が適用されます。

2.省エネルギー性能の見直しと住宅区分

 1.のとおり、住宅ローン減税から見ると、2022年以降においては「ZEH水準省エネ住宅および省エネ基準適合住宅」が新設されたことが注目されますが、実は、「認定住宅(認定長期優良住宅および認定低炭素住宅)」についても省エネルギー性能の基準等の改正が予定されており、この点も注目すべきポイントです。

3.省エネルギー性能に係る上位等級の創設

 まず、省エネルギー性能に関して、住宅性能表示制度における省エネルギー対策等級を確認しましょう。現時点においては、断熱等性能等級は等級4、一次エネルギー消費量等級は等級5が最高等級であり、評価に当たっては断熱等性能等級と一次エネルギー消費量等級のいずれか一方または両方を選択できることとなっています。
 これが2022年4月1日からは、ZEH水準の等級として、断熱等性能等級5、一次エネルギー消費量等級6が新たに設けられるほか、2022年10月1日からの評価に当たっては断熱等性能等級と一次エネルギー消費量等級の両方が評価取得必須項目とされます。具体的にはそれぞれ下表のとおりとなります。

<改定 断熱等性能等級>

等級 要求値(★1)
等級5(新設) UA値(★2)≦0.60
等級4 UA値≦0.87
等級3 UA値≦1.54
等級2 UA値≦1.67
等級1

(★1)6地域(東京等)の場合
(★2)外皮平均熱貫流率(住戸内外の温度差1度当たりの総熱損失量(換気による熱損失量を除く。)を外皮の面積で除した数値)

<改定 一次エネルギー消費量等級>

等級 要求値
等級6(新設) BEI(★3)≦0.8(★4)(省エネ基準▲20%)
等級5 BEI≦0.9 (省エネ基準▲10%)
等級4 BEI≦1.0 (省エネ基準)
等級1

(★3)基準一次エネルギー消費量に対する設計一次エネルギー消費量の割合(その他一次エネルギー消費量を除く)
(★4)太陽光発電設備によるエネルギー消費量の削減は見込まない

 さて、住宅ローン減税に話を戻すと、2022年以降の住宅ローン減税において新設された「省エネ基準適合住宅」とは、断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上の性能を有する住宅、すなわち、現行の省エネ基準を満たす住宅が該当します。また、「ZEH水準省エネ住宅」とは、前述したZEH水準(断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上)の性能を有する住宅が該当することとなり、新設される省エネルギー性能に係る最高等級(2022年4月1日時点)が求められます。

4.認定住宅(認定長期優良住宅および認定低炭素住宅)と省エネルギー性能

①認定長期優良住宅と省エネルギー性能

 長期優良住宅の認定にあたっては、省エネルギー性能のほか、耐震性、劣化対策、維持管理、更新の容易性、維持保全計画の提出などの要件があります。長期優良住宅については、2022年2月20日から災害配慮基準、住棟認定、住宅性能評価との一体申請などの一部の制度改正が施行されておりますが、さらに2022年10月1日からは認定基準の見直しが施行されることになっています。特に注目すべきは、省エネルギー性能に係る認定基準の見直しであり、認定要件としての省エネ対策が強化される予定です。
 見直し後は、断熱等性能についてはZEH水準の基準(断熱等性能等級5)に引き上げられるほか、これまで要件として定められていなかった一次エネルギー消費量性能についても、ZEH水準の基準(一次エネルギー消費量等級6)が追加される予定です。

②認定低炭素住宅と省エネルギー性能

 低炭素住宅の認定には、住宅の外皮の熱性能に関する基準および一次エネルギー消費量に関する基準が必須項目となっており、後者は一次エネルギー消費量が省エネ基準に比べて▲10%以上となることが求められています。 今後の要件の改正において、断熱等性能、一次エネルギー消費量性能については、ともにZEH水準の基準(断熱等性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級6)に引き上げられることになりそうです。

 このほか、低炭素住宅の認定には、低炭素化に資する8つの措置(「HEMS等の導入」「節水対策」「躯体の低炭素化」「ヒートアイランド対策」より)のうち2項目以上を講じている必要があり、この要件についても次のとおり改正が予定されています。

→以下の1)および2)のいずれにも適合すること。

  1. )再生可能エネルギーを導入すること。(太陽光発電設備等)
  2. )選択項目のうち、1つを講じること。(選択項目は8つの措置に、新たに太陽光発電設備等の再生可能エネルギー発電設備と連携したV2H充放電設備等の設置が追加される予定です。)

5.「住宅ローン減税」と住宅の省エネルギー性能

 以上のように、住宅ローン減税において借入限度額の区分として、住宅区分が設けられますが、今後より高い税金軽減効果を得たり、認定住宅による制度のメリットを享受したりするには、ZEH水準の省エネ性能が求められると言えます。
 住宅取得者や取得意向の方に対して、これらを踏まえたより高い省エネ性能等への取組を説明できることはこれからますます重要になってくるでしょう。


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