目指せ、雨漏り事故ゼロへの道‼ー第7回 雨漏りを再発させないためには…!
住宅あんしん保証は、雨水の浸入による被害(以下「雨漏り事故」)を未然に防ぐため、届出・登録事業者の方に向けて雨漏り事故の傾向や雨漏り事故を防止するための情報提供に取り組んでいます。『もっと!あんしん雨漏り対策ハンドブック』(以下「ハンドブック」)の発行・提供およびハンドブックの要点解説として作成した「目指せ、雨漏り事故ゼロへの道‼」(以下「要点解説」)はその取組みの1つになります。
詳細な事故事例や部位ごとの雨漏り事故対策については、「ハンドブック」および「要点解説」をご覧いただくとして、このコーナーでは、「雨漏り事故の基本」、「対策の概要」および「住宅(新築・既存)に関するお役立ち情報」を継続的にご案内していきます。
1.雨漏りが発生した場合の心構えと保険手続の流れ
今回は、雨漏り事故が発生した場合の心構え、保険手続の流れおよび「雨漏りを再発させないためには…!」についてご案内いたします。
雨漏りが発生しその一報が入った時、まず、住宅所有者等への対応を最優先に進めることが重要です。初期の応急対応および事後の調査・修理等の進め方などについての丁寧な説明を誤ると、住宅所有者等に不信感を抱かせることになり、先々の補償対応・解決に影響を及ぼしかねません。事故が発生した時こそ、誠意を持って住宅所有者等と向き合い、事故対応に取り組む姿勢を心がけてください。
[図1]は、「事故発生から保険対応可否判断までの流れ」と保険手続の概要を整理したものになります。事業者様からの事故連絡、原因特定および現地調査が終了した後、提出いただく「事故原因報告書」等を精査して、保険対応の可否を判断いたします。なお、新築住宅瑕疵保険は、保険対象部分の「瑕疵」(新築施工時の不具合等)に起因する損害を補償するものになりますので、不具合の原因が「瑕疵」によらない経年劣化(自然の消耗や変質等)の場合は、瑕疵保険の補償対象外となります。
①事故原因の調査
事故原因が瑕疵(構造耐力上・防水性能上)によるものなのか、確認してください。
原因箇所・被害箇所の写真(雨漏り確認のための散水調査など)を撮影してください。
②事故連絡票・図面(原因箇所と被害箇所を記載)の提出
住宅あんしん保証 損害サービス部へご連絡をお願いいたします。
手続の流れや必要書類について、ご案内します。
③現地調査
ご提出いただいた事故原因、被害状況を確認するために、弊社にて鑑定人(※)を手配し、現場確認をいたします。
※すべての調査に鑑定人を手配するわけではありません。
※鑑定人が事故原因を特定することはいたしません。
④事故原因報告書の作成・提出
事業者による原因特定、現地調査が終了した後に、「事故原因報告書」を作成の上、提出してください。
ご提出いただいた「事故原因報告書」および「鑑定書」(※)等を精査しまして、保険対応の可否を判断いたします。
※鑑定人等が現地調査の内容(事故状況、事故原因、損害状況等)および調査時写真等を取りまとめたもの
前述の「保険対応可否の判断」において、保険金支払い事象(有責)と判断された場合、[図2]の「保険金お支払までの流れ」の保険手続に進みます。提出いただく「修補見積書」等を精査して、お支払保険金を算出・提示、支払保険金の合意後、修補工事の実施、報告・提出いただく書類(報告書・請求書類一式等)を確認のうえ、ご指定の口座に保険金をお支払いします。
なお、支払保険金のうち「修補費用」とは、事故により損害が生じた部分(原因部分と波及損害部分)を損害発生直前の状態に復旧するために必要な直接費用(材料費、加工費、運搬費、損害が生じた部分の解体・撤去費用、諸経費等)となりますので、保険始期日における設計・仕様・材料等を上回る(グレードアップする場合)ことにより増加した「修補費用」は控除(補償対象外)なりますので、ご注意ください。
①修補見積書、修補範囲図等の提出
住宅所有者等と修補方法等の打ち合わせをしていただき「修補見積書」と「修補範囲図」等の作成をお願いいたします。
その他、ご準備いただきたい書類については弊社よりご案内いたします。
②③お支払保険金の査定・連絡
ご提出いただいた「修補見積書」等を精査しまして、お支払保険金を算出いたします。
金額が確定しましたらご連絡いたします。
④修補工事
お支払保険金を確認いただきましたら、修補工事を実施してください。
※修補前・修補中・修補後・事故原因箇所の写真は必ずご提出をお願いいたします。
※修補工事完了後、同じ原因箇所から再度雨漏り等の事故が発生した場合、保険金のお支払対象とはなりません。
⑤保険金支払いに必要な書類(請求書類一式)の提出
支払保険金の合意後、住宅あんしん保証より保険金支払いに必要な書類(請求書類一式)をお送りいたします。
必要事項を記載していただき、住宅あんしん保証へ提出してください。
⑥書類の確認、保険金の支払
ご提出いただきました書類を確認のうえ、ご指定の口座に保険金をお支払いします。
2.なぜ2度目の雨漏りが起きてしまうのか?
過去に修理した部分が再度雨漏りを起こす事があります。雨漏りの修理で一番多いクレームは「再発」です。一度修理してもらったのに、しばらくしたらまた雨漏りが発生したというケースが散見されます。
「再発」の多くの原因は、最初の工事で原因の特定ができないまま修理を進めた(応急処置で様子見、原因究明の先送り等)ため、全く見当違いな工事をしていることがあるからです。雨漏りの修理が難しい一番の理由は「実際に室内で雨水が垂れている場所」と「その原因(一次防水・二次防水)となる場所」が必ずしも一致しないことが多いからです。
雨漏りの「再発」は、多くの場合で複数の要因が重なって発生していると考えられます。「再発」の原因を突き詰めると、[図3]のように「調査(※)」と「修補」が不十分だったことが考えられます。雨漏りを「再発」させないためには、ごく当たり前のことをしっかり行うことが重要になります。
なお、修補工事完了後、同じ原因箇所から再度雨漏り等の事故が発生した場合、保険金のお支払対象とはなりません。
※ 調査費用の目安:散水調査(3~30万円)、サーモグラフィー調査(5~50万円)、発光液調査(5~25万円)、解体調査(5万円~)
3.雨漏りを再発させないためには「確実な調査」と「適切な修補」を!
最後に「雨漏りを再発させないためには…!」を整理すると、ポイントは「確実な調査」と「適切な修補」です。
「確実な調査」について、事故の現地調査には[図4]ように重要な3つの理由があると考えます。調査ひとつをとっても、事業者の金銭・時間の負担はありますが、将来の自社の価値をつくる投資と考えて積極的に原因究明を行ってください。また、現場では事業者が現場確認の上、関連メーカーおよび職方との合同現場調査を行うことが早期解決につながると考えます。
「適切な修補」について、現地調査による原因究明が確実であれば、修補の期間やコストも、無駄なく作業することができます。調査が中途半端で修補が2度3度に及ぶようでは、施主からの信頼を失ってしまいかねません。確実な調査を行い、適切な修補を行うことが何よりも解決への近道であり、それらがスムーズに行われることで施主との関係も良好に保てると考えます。
【雨漏り対策に関する参考情報】
住宅リフォーム・紛争処理支援センターHP/「統計・資料等」ページ/「雨漏りを防ぐために(安全確認シート)」
詳細につきましては、以下のページをご参照ください。
https://www.chord.or.jp/documents/tokei/index.html
「住宅取得者向け資料」と「住宅事業者向け資料」の2種類が掲載されていて、それぞれの内容は以下のとおりです。
●住宅取得者向け資料
これから住宅を取得する方に向けて、住宅部位ごとの雨漏りリスクやそのリスク低減のアイデア等について、同センターが収集した実例を基にまとめたもの。
●住宅事業者向け資料
住宅取得者向け資料で取り上げた部位の具体的な雨漏り事例やチェックポイントを紹介したもの。
4.データダウンロードのご案内 ~ 「ハンドブック」と「要点解説」 ~
第7回目となる今回は「雨漏りを再発させないためには…!」についてご案内しました。雨漏り事故を未然に防ぐには、建築工事に関わる全ての方々が意識を持って、雨水の浸入を防止する部分の施工に関する知識・技術を高めるとともに、適切なタイミングで第三者の検査を利用することが非常に有効です。
是非、ハンドブックの「事故事例」等を知見として、注意が必要な部分や有効な防水措置等を再確認し、防水に関する施工品質の向上に繋げてください。
さらに、今年の4月より連載してまいりました『目指せ、雨漏り事故ゼロへの道!!』ですが、次回(第8回)をもって最終回となります。次回は「雨漏りまで至っていないが注意しておきたい事象」をご案内しますので、乞うご期待ください。
なお、次のフォームより、貴社の情報をご入力いただき送信していただけましたら、「ハンドブック」と「要点解説」データのダウンロードURLをメールにてお送りします。 (ダウンロードいただけるデータは 過去の連載 と同じです。)