目指せ、雨漏り事故ゼロへの道‼ー第8回(最終回) 雨漏りまで至っていないが注意しておきたい事象

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目指せ、雨漏り事故ゼロへの道‼ー第8回(最終回) 雨漏りまで至っていないが注意しておきたい事象

 住宅あんしん保証は、雨水の浸入による被害(以下「雨漏り事故」)を未然に防ぐため、届出・登録事業者の方に向けて雨漏り事故の傾向や雨漏り事故を防止するための情報提供に取り組んでいます。『もっと!あんしん雨漏り対策ハンドブック』(以下「ハンドブック」)の発行・提供およびハンドブックの要点解説として作成した「目指せ、雨漏り事故ゼロへの道!!」(以下「要点解説」)はその取組みの1つになります。
 詳細な事故事例や部位ごとの雨漏り事故対策については、「ハンドブック」および「要点解説」をご覧いただくとして、このコーナー「目指せ、雨漏り事故ゼロへの道‼」では、「雨漏り事故の基本」、「対策の概要」および「住宅(新築・既存)に関するお役立ち情報」を8回に渡ってご案内してまいりました。いよいよ、今回が最終回になります。

「雨漏り対策ハンドブック」および「要点解説」

1.屋根における雨漏りの恐れのある事象

 最終回では「今後、雨漏りの恐れのある事象」および「結露」(住宅瑕疵保険における事故には該当しません)など注意しておきたい事象についてご案内いたします。
 雨漏りは、特に2次防水(屋根の下葺き材や外壁の防水紙など)が機能していない場合(防水工事等における施工不備によりキズや隙間などが内在)に発生します。
 はじめに1.2.の項では、「今後、雨漏りの恐れのある事象」として1次防水または2次防水の防水性能を損なう恐れのある事象について紹介いたします。
 まずは「屋根における雨漏りの恐れのある事象」から2事例です。
 [写真1]の事例は「施工時の不注意で屋根葺き材に欠けが生じている事象」です。スレートは重ね合わせの幅により、留め付け釘までの雨水到達を防いでいます。屋根葺き材の割れや欠け、ヒビにより雨水が釘孔に到達しやすくなれば、その分だけ雨水の浸入、雨漏り事故が発生しやすくなります。点検等で損傷を発見した場合は交換などの早期修補が必要です。
 また、劣化が進んだスレートは割れやすくなっている場合もあるので、改修時は特に注意しましょう。
 [写真2]の事例は「陸屋根の下地勾配が緩すぎたため、屋根面に水たまりができている事象」です。日頃から水たまりが残る屋根は、防水層に不具合が生じた場合に雨漏りしやすい環境です。陸屋根は1/50以上の勾配を確保すること(ただし、防水材製造者の施工基準において表面排水を行いやすい措置を施すなど、雨水の浸入を防止するうえで適切であると認められる場合は当該基準によります。)で水たまりの多くは解消されますが、大がかりな防水工事となるため、短時間での改善は難しいことも考えられます。従って、改善されるまでの間は、防水層の異常の有無をこまめに確認することが重要です。

[写真1]スレート屋根葺き材の割れ[写真2]シート防水の水たまり

2.外壁における雨漏りの恐れのある事象

 続いて「外壁における雨漏りの恐れのある事象」から2事例です。
 [写真3]の事例は「外壁の無垢板仕上げで一部に浮き・たわみ・サネの外れが生じている事象」になります。板張り外壁においては暴れに配慮した施工が必要で、場合によっては外壁を留めるビスごと引き抜かれてしまいます。ビスは防水紙を貫通しているため、引き抜きで拡がったビス孔から雨水の浸入が生じます。計画段階から、施工部分の雨掛りと日射、仕上、材種、乾燥状況および塗料等に注意が必要です。
 [写真4]の事例は「目地に樋金物等を差し込んでいる事象」になります。サイディング仕上げの目地は防水性能の確保とムーブメントの緩衝を目的としており、その部分に樋金物等を差し込むことで目地の性能が低下しては意味がありません。樋金物等は下地のある外壁部分に先穴を開け、サイディングと適切なクリアランスを確保して取付け、隙間にシーリング材を充てんする必要があります。

[写真3]無垢板張り外壁における材の暴れ[写真4]サイディング目地に対する樋金物等の差し込み

3.「結露」を放置しておくと、様々な悪影響を及ぼします!

 最後の項では、住宅瑕疵保険における事故には該当しない事象であるものの、住宅への悪影響が考えられる「結露」の事例とその対策を紹介いたします。

(1)「結露」による事象

 「結露」を放置しておくと、様々な悪影響を及ぼします。住宅の構造を腐らせたり、シロアリを呼びこんだりして、住宅の耐震性能や耐久性を著しく低下させます。更に、カビやダニが繁殖すると、入居者が喘息や肺炎を罹患してしまうなど、健康面でも悪影響を及ぼす恐れがあります。
 次の2事例は「結露」の発生による2次被害について代表的な事象です。
 [写真5]の事例では、室内気温と室外気温の温度差により「結露」が発生しています。部屋の暖かく湿った空気が、外気で冷たくなった窓面に触れると、空気中の水蒸気が水に変わり「結露」となり、サッシ近くの窓枠などには、結露水による水染みが確認できます。窓枠や壁などの木下地材が濡れたままだと濡れ損、腐朽の原因になると共に周囲の家具やカーテンなどにも被害が広がってしまいます。
 [写真6]の事例では、屋根面ごとの気温差の影響で北側の野地板は常時濡れており、野地板表面には一面にカビが発生しています。これは日常生活での湿気が小屋裏に流入し、加えて小屋裏換気が適切に行われなかったため湿気が抜けなかった事が原因です。カビやダニは、湿度がおよそ60%以上で活動をすると言われています。もしも、「結露」で濡れた箇所を放置していると、すぐに湿度は60%を超えてしまいます。対して、南面は日射により野地板面の温度が高くなるため、「結露」が発生しても乾いた様子で、問題のない状態でした。

[写真5]「結露」による2次被害(窓枠)[写真6]「結露」による2次被害(小屋裏屋根面)

(2)「結露」になりやすい環境

 「結露」は、暖かい空気(大量の湿気を含む)と冷たい物(窓ガラスやアルミサッシ、無断熱の壁等)が触れることで発生し、根本的な解決をしない限り「結露」は止まりません。基本的には、換気を適切に行うことが結露防止には最も有効です。
 そこで、「結露」になりやすい環境について、部位ごとに「湿気の発生源」および「結露が発生する原因」を[図]とともに整理しています。次の「(3)必要となる対策」と合わせて、入居者からの問い合わせなどに対するご説明の参考にしてください。

[図]「結露」になりやすい環境

①小屋裏

湿気の発生源
壁や天井の隙間を通ってきた生活上の湿気

「結露」が発生する原因
小屋裏の換気量不足

②床下

湿気の発生源
設備配管からの水漏れ、地表面の湿気、基礎コンクリートの水分

「結露」が発生する原因
床下の換気量不足

③収納(納戸)

湿気の発生源
隣接する居室等からの生活上の湿気、収納物からの湿気

「結露」が発生する原因
収納部屋の換気量不足、断熱性能不足

④吹き抜け・勾配天井

湿気の発生源
生活上の湿気(特にキッチン・リビング)

「結露」が発生する原因
断熱性能不足(屋根断熱性能、トップライト・高窓の断熱性能)

⑤開口部

湿気の発生源
生活上の湿気

「結露」が発生する原因
ガラス部分での露点、内外の温度・湿度差

(3)必要となる対策

住宅全体の高気密・高断熱化および計画換気

 温度差が大きくなる部分こそ「高断熱化する」「天井・外壁にペーパーバリアを施工する事で高気密化する」「サッシ部分の樹脂化や二重化」が効果的です。
 そして、「計画換気」を併せて行うことが重要です。壁体内の結露防止のためには、換気が欠かせません。しっかりと換気をすることで、多くの湿気が壁体内に侵入することを防ぎ、「結露」等も発生しにくくします。窓を開けることはもちろん、台所やお風呂にある換気扇の利用も効果的です。とはいえ、寒い冬に窓を開け放しておくのは大変不便です。そのようなときは、5~10分だけでも窓を開けて換気をするとよいでしょう。

小屋裏換気

 近年、空調機器(エアコン・加湿器)の発達により住宅における温熱環境の質が向上していますが、日常生活で発生する湿気などが壁や天井の隙間から小屋裏に逃げていくことに対し、小屋裏空間に換気口が適切に設置されておらず、小屋裏内部が高湿度になり結露被害となる例があります。
 小屋裏換気計画は、効率良く「下部から空気を入れて上部から抜く」ことが重要です。中でも、下屋は大きさや形状が様々で換気計画が行いにくい場所のひとつですが、専用の換気部材も市販されていますので、適切な換気計画となるようしっかり検討しましょう。

加湿器の過剰使用を控える

 冬になると空気が乾燥するため、加湿器を利用する方も多いでしょう。しかし、室内の湿度が高ければ高いほど「結露」は発生しやすくなってしまいます。必要以上に加湿器を使用することは控えたほうがよいでしょう。

4.データダウンロードのご案内 ~ 「ハンドブック」と「要点解説」 ~

 最終回(第8回)では「雨漏りまで至っていないが注意しておきたい事象」をご案内しました。雨漏り事故を未然に防ぐには、建築工事に関わる全ての方々が意識を持って、雨水の浸入を防止する部分の施工に関する知識・技術を高めるとともに、適切なタイミングで第三者の検査を利用することが非常に有効です。
 是非、ハンドブックの「事故事例」等を知見として、注意が必要な部分や有効な防水措置等を再確認し、防水に関する施工品質の向上に繋げてください。
 そして、これからもお客様に良質な住宅をお届けするため、一緒に頑張りましょう!
 なお、次のフォームより、貴社の情報をご入力いただき送信していただけましたら、「ハンドブック」と「要点解説」データのダウンロードURLをメールにてお送りします。
(ダウンロードいただけるデータは 過去の連載 と同じです。)

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